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1977 エアロがくれた真冬の熱い夜
〜Japan Tour初日〜
text by Ferio

    1977年1月29日(土)。エアロスミスが群馬に来てくれました。
    彼らのライブはその冬のもっともホットな夜となりました。

    その日の私は昼間から夜のライブが気になって仕方がありません。
    集中力に欠けて、そわそわして時計と何度もにらめっこを繰り返しました。
    夕方になり持ってる服の中で自分なりに一番カッコイイと思われる
    ファッションに着替え、駅に向かいました。
    群馬のローカル線「上毛電鉄」に乗り込むと、エアロのコンサートに
    行くと思われるおしゃれな少女たちが何人も見かけられました。
    その中には友達の妹の純子ちゃん(当時高3)の姿もありました。
    いつもは清楚で地味な雰囲気の子でしたが今日は別人の様です。
    ちょっぴりセクシーなミニスカートをはき、顔にはうっすらとメイクをしています。
    私の顔を見つけるとにっこり笑って手を振ってくれました。
    これから始まるイベントに期待で胸を膨らませて誰もがハイな気分になっていたんですね。

    エアロスミスは当時、登り調子で最も旬なアーティストでした。
    アメリカでも大会場中心のライブツアーの幕開けは、
    近郊の地方都市でオープニングしメンバーのテンションを高めてから
    大都市入りすると聞いてはいましたが、あんなビッグなグループが
    本当に群馬のような田舎に来てくれるか実際に本人たちを見るまでは心配です。
    ロック仲間の友人にこんな冗談を言われました。
    『ひょっとしたら、そっくりさんのコメディアンがステージに登場して
    「アロエスミスのスティーブ平(たいら)で〜す」などとオチをつけられるのでは?』
    まさかそんなことはないですよね。。。

    群馬県スポーツセンターに到着すると会場内は熱気に満ちあふれています。
    場内が暗くなりオープニングアクトの「VOW WOW」が登場しました。
    ホールに大音響のギターの音色が流れ出すとそんな不安も消えていきました。
    彼らは当時、日本ではアイドル系ハードロックバンドとして人気があり
    単独ライブでもかなり集客が望める存在だったのです。
    VOW WOWが前座ならそれ以下がトリに出るはずはありませんものね。

    VOW WOWで景気づけされた会場の熱気がピークに差し掛かる頃、
    エアロのメンバーがステージに登場しました。
    一曲目が始まるのと同時に前の方に座っていた人たちはステージの前に
    走り出してしまい、他の人たちも椅子の上に立ち上がってしまいました。
    ライブに慣れていない田舎のファンの悲しさでしょう。
    私はエアロのメンバーに申し訳ない気がして日本人のファンとして
    マナーを守るため最初は我慢して座っていました。
    「みんな、座りなよ。後ろが見えないよ!」と声をかけたい感情に襲われました。
    しかし・・・目の前には椅子の上に立っている女の子が曲に併せて縦揺れリズムを刻んでいます。
    そして短いスカートから白い下着がチラチラ。。。
    当時18歳だった純情少年だった私にとってあまりに衝撃的で息が止まりそうでした。

    どうしよう・・・このまま座っていていようかな?
    少女の白い太ももを目の前にした私は悩みました。
    その時、激しく動く彼女の隙間からスティーブンの熱唱する姿が見えました。
    そして私と目が合い、「おい、ヤングブラザー!せっかく逢えたんだから
    お前も立ち上がれ!そして俺たちの姿をしっかり見ていけ!」と
    彼の目が訴えているような気がしました。
    すまん、スティーブン。僕が悪かった、今から参加するぜ、イイェィ!
    ついに私もスタンディングアップ!

    ステージの袖には彼らの恋人たちが笑顔で演奏を見つめています。
    メンバーも曲の合間に彼女たちに目でサインを送っているようでした。
    雑誌プレイボーイのグラビアに登場出来そうな美女ばかりです。
    私にとって始めての本格的なライブ体験というだけでなく
    肌でアメリカの風を感じるような気分を味わえました。

    四曲目に演奏された「Lick And A Promise」あたりから
    彼らの演奏はさらに盛り上がって行きます。
    ここで各メンバーのコメントを。
    ドラムのジョーイはタイトなビートを終始笑顔で淡々と刻んでいきます。
    ベースのトムは長身でステージでも見栄えがします。
    ギターのブラッドはシャイなヤツなんでしょう、
    照れた笑顔が女の子たちの心をくすぐるようでした。
    メインギタリストのジョー・ペリーはニヒルでクール。
    カッコイイです、キースリチャードに似てます。まさにロッカーですね。
    そしてスティーブン。彼は本当にエネルギッシュ。
    大きな口を開けてまさに「全身で」歌ってくれます。
    疾走感あふれる彼らの演奏は本当に素晴らしいの一言です。

    私が大好きな「Dream On」が始まりました。ツインギターが華麗にメロディを刻み、
    スティーブンのボーカルは最初は押さえ気味、そして最後は熱唱に変わる。
    そして大ヒット曲「Walk This Way」。
    サビの部分では会場のみんながコブシを振り上げながら声を合わせて
    「Walk This Way!」と叫んでいました。もちろん私もです。

    ライブも佳境に入り「The Train Kept A Rollin'」では
    みんな曲に合わせて激しく踊ってます。
    私の前に座っているお嬢さんの動きもダイナミックなものとなり、
    私がステージを見るためには彼女の動きには反対方向に動かなければなりません。
    激しいギターバトルに合わせて縦揺れしていた彼女はだんだん体勢を崩し
    突然後ろの私に向かって倒れ込んで来ました。
    私がしっかりと受け止めてあげると、彼女は陶酔した表情で
    「ありがとう・・・」と微笑んでくれました。

    私の両腕は彼女の腰と胸のあたりに回っています。
    爽やかな甘い香りがしました、そして心臓がドキドキしてしまいました。
    彼女の顔を見たのはその時始めてでしたが目がぱっちりした美少女でした。
    すぐに椅子の上に戻った彼女は再び演奏に合わせて踊り始めましたが
    私の腕の中には彼女の甘い温もりが残っていました。
    素晴らしいライブと素敵な美少女、なんと至福な時間なんでしょう。。。

    アンコールの「Toys In The Attic」が終わり会場が明るくなると
    妙に寂しい気がしました。この興奮がずっと続いて欲しい。。。
    あっという間に一時間程度のライブは終了してしまいました。
    会場を去るとき、床にはブーツやイヤリングが転がっていました。
    またバッグがなくなって泣きべそかいてる女の子の姿も。。。
    私は興奮が醒めやらず、しばらくの間ぼーっとしてました。

    帰りの電車の中ではみんな満足そうな笑顔を浮かべて、今日のライブの
    すばらしさをたたえていました。通勤通学の時以外は滅多に混むことのない
    上毛電鉄も今夜だけは、ほぼ満員。
    お祭りの後みたいな心地よい疲れと満足感が車内に溢れていました。

    あの日のライブから20年以上が立ちましたがあれだけのビッグなアーティストを
    群馬で見ることは今後もめったにないでしょう。
    本当に素晴らしい思い出を残してくれました。
    ラジオから近年大ヒットした「アルマゲドン」のタイトル曲が流れると
    今でもあの「暑い冬の一夜」を思い出します。
    あのライブに参加したキッズたちも今はいいオヤジ、
    いいおばちゃんになって毎日を送っているんでしょうね。
    もともと猿顔系だったスティーブンは最近はしわが増えて、より猿っぽい顔になりました。
    でも自分の生き様を反映し、年輪を顔に刻んでいくようで味わいのある顔でもあります。
    私も歳を取っても、気持ちだけはあの日に刻まれたロック魂を忘れずに
    いつまでも若い気持ちで過ごして行きたいと思います。


    ↑初来日チケット(当時はバンドごとにデザインが違った)
    ほなみ姉ちゃん提供



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1977 エアロがくれた真冬の熱い夜 / text by Ferio
? (まだ書いてるらしい)

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