Covers 01

あきら教授の岩石音楽史 集中講座
Covers : Roots of Aerosmith
エアロスミスがカバーした、彼らが影響を受けた「ルーツ」の検証
Version 1.01 = 1999/12/19

●エアロスミスがレコードでカバーした曲、ステージで演奏した曲のオリジナル奏者の紹介。どんなバンドに影響されているのかをイッパツ解答（ライブ曲はプロ・デビュー後に限定しました）。
●エアロスミスに影響を与えたアーチストと、オリジナル奏者は違う場合は両方を記した。

●以下の記事は「第１版」です。そのうち改訂版になると思います。
★あきら教授から、ひと言

姉妹編：リアルプレイヤーで「タダで聴くCovers」できました。

公式録音された曲	ライブでのみ演奏された曲
All Your Love Big Ten Inch Record Come Together Cry Me A River Helter Skelter I'm Down Love Me Two Times Milk Cow Blues Remember（Walking In The Sand) Train Kept A Rollin' Think About It Walking The Dog	Batman's Theme Dazed And Confused Heartbreaker I Ain't Got You I'm Not Talking Mother Popcorn Peter Gunn Rattlesnaks Shake Red House Stranger In The Night Stop Messin' Around

All Your Love(Otis Rush)
◎スタジオ録音：「Pandora's Box」 : Disc 2-12に収録。アルバム「Draw The Line」のアウトテイク。

★John Mayall’s Blues Breakers [1965- mid 1970's]
ジョン・メイオールは、ブリティッシュ・ブルースの中心人物。キーボード奏者。1964年にレコード・デビューし、まもなくブルース・ブレイカーズを結成。1965年にヤードバーズを抜けたエリック・クラプトンを誘い、ブルース・ﾌﾞレイカーズ名義で発表したのが1966年の「Blues Breakers with Eric Clapton」。クラプトンはこの１枚を残し脱退、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーとクリームを結成する。クラプトンの後釜となったのが、後にフリートウッド・マックを結成するピーター・グリーン。A Hard Roadというアルバムを残している。

●「All Your Love」は、左のJohn Mayall's Blues Breakers with Eric Claptonのオープニング・ナンバー。ジョン・メイオールによると、「クラプトンのたっての希望で演奏した曲」だそうである。

★Otis Rush [1934/04/29-]
シカゴ・ブルースの中心人物の１人。マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフらとともに活躍。左利きのギター＆ボーカリスト。
1956年に「I Can't Quit You, Baby」が、ビルボードR&Bチャート６位に。ブルースでは異例のトップ10ヒットとなった。この曲は、Led Zeppelinのファースト・アルバムでも取り上げられている。

●左は、オーティス・ラッシュがコブラ・レコードに残した録音を集めたベスト盤「Cobra Recording 1956-1958」。All Your Loveも収録。

●結成直後のエアロスミスが、セミプロ時代に演奏していたレパートリーの１つ。クラプトン＆ブルースブレイカーズ版がお手本で、演奏スタイルもかなり似ている。りリラックスした演奏だが、同時期に録音された「Milk Caw Blues」に比べると、イマひとつ。未発表のままオクラ入りしたのも当然か。
●関連記事：Walk This Way P.130

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Batman Theme(Neal Hefty)
◎ライブのみ：1974-1977年初来日ごろまで、Train Kept A Rollin'の中で部分的に演奏。

●1966-1967年にアメリカで放送されたＴＶシリーズ「バットマン（怪鳥人間バットマン）」のテーマ曲。
●一度聴いたら忘れられない、ギターのリフがカッコいいインストナンバー。ベンチャーズをはじめカバーも多いが、カッコよさではオリジナル盤が一番。日本でもシーナ＆ロケッツがカバーし、今も彼らのライブのオープニングナンバーに使われている。
●ＴＶシリーズの音楽監督は、ネルソン・リドルだが、テーマ曲を作曲したのはニール・ヘフティ。２人ともジャズ畑の人（ジャズ・アレンジゃー）なので、ギターがロック、バックのビートはジャズという味付けが面白い。ニール・ヘフティの自作自演盤（左の写真は再発ＣＤ）もあるが、ネルソン・リドル指揮のオリジナルサウンドトラック盤のほうができがいい。ドラムのビートが違うのだ。

●Train Kept A Rollin'を、スタジオ版同様スロー＆アップの「２部構成」で演奏していた1974-1977年に登場。曲の最後で「ジョーのギター・ソロ～バットマンのテーマ」と続いた。1977年春以降は「バットマン」に代わり、Live! Bootlegに収録された「Strainger In The Night」や「Peter Gunn」が演奏されている。
●最初はジョーイのドラミングが、ニール・ヘフティのバージョンのほうだったが、初来日のころになると、オリジナルの「よりジャズっぽいドラミング」に似てきたのが面白かった。個人的に大好きな曲。
●「007/ジェームズ・ボンドのテーマ」「スパイ大作戦のテーマ」などと並ぶ、1960年代サントラ・クラシックの１曲。1960年代に生きた人間なら知ってて当然というほど有名なエバーグリーン・ナンバーである。これもセミプロ時代に演奏していたレパートリーの１つ。

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Big Ten Inch Record(Weismantel)
◎スタジオ録音：サードアルバム「Toys In Te Attic」Ａ面５曲収録。ライブ登場率も高いジャンプ・ブルース。

★Bull Moose Jackson [1919/04/22-1989/07/31]
R&B、ジャンプブルースの黒人シンガー。1940年代後半から1950年代に主に活躍。

●オリジナルは、Bull Moose Jackson / Tiny Bradshaw's Orchestraの1952年のヒット。「Walk This Way/エアロスミス自伝」P275では、ブルムース・ブラウンと出てくるが、これはスティーブンの記憶違いだろう。
●セクシャルな表現をユーモラスに歌った艶笑ソング系。30cmＬＰが登場する前のレコード盤は、78回転のトーインチ（10インチ＝25センチ＝ＳＰ盤）だった。下半身25cmキャノン砲をユーモラスに歌ったナンバー。
●左は、原曲を収録したオムニバスＣＤ「Risque Rhythm」。

●エアロスミスは、イギリスのバンドが演奏したブルースを「逆輸入」する例が多いが、これはオリジナルからダイレクトにカバー。「Toys In The Attic」録音のころ、ラジオを流れていたのをテープでもらい、気にいったらしい。
●関連記事：Walk This Way P.275

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Come Together(Lennon/McCartney)
◎スタジオ録音：映画「サージェント・ペパー」のサントラ用に録音、シングル発売もされた。ライブでもごく稀に登場する。
また「Live! Bootleg」には、スタジオライブの再録版が収録された。再録のほうが出来がいい。

★The Beatles [1960-1970]
説明不要の怪物バンド。近代ロックの開祖。

●ビートルズの４人が最後に集まって作ったアルバム「アビー・ロード」のＡ面１曲目。1969年10月に「Come Together/Something」の両面でシングル発売、全米ビルボード両Ａ面１位（単独２位）を記録。
●作曲はジョン・レノン。クレジットはレノン＝マッカートニーだが、これは共同作業が多かった２人が「単独で曲を発表するときも、共作クレジットを使う」という約束があったため。
●映画「サージェント・ペパー(Sgt.Pepper's Lonly Hearts Club Band)」は、ジョージ・マーティンのプロデュースと聞いて、喜んで参加したらしい。映画自体はゴミみたいなもんだが。

●エアロスミスは尊敬するバンドをカバーするとき、あまり原型を崩さないが、特にこの曲は「ビートルズを題材にした音楽映画用の録音、しかもビートルズを担当したジョージ・マーティン直々プロデュース」で、オリジナルをかなり忠実に再現している。そのわりに、エアロのカラーが出たなかなかの出来ばえ。
●ライブではまれしか登場しないが、「グラミー賞」のステージで演奏されたテイクは有名（後年ビデオ化）。また「ウッドストック'94」のステージでも演奏された。
●映画「サージェント・ペパー」には、この曲の演奏シーンがある。1999年、ＮＨＫ－ＢＳ２「ミッドナイト・スペシャル」電話リクエストで放送され、ファンを狂気させた。あんときゃ、みんなで一生懸命リクエストはがきを書いたもんねー。

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Cry Me A River(A.Hamilton)
◎スタジオ録音：アルバム「Rock In A Hard Place」Ａ面最後（５曲目）に収録。

★Julie London [1926/09/26-]
元々は1940年代中期に映画女優としてデビュー、1950年後半－1960年代にはハスキー・ボイスの美人ジャズ・シンガーとしても活躍。セックス・シンボル系のお方だが、歌には味がある。。

●デビュー・アルバム「Julie Is Her Name （1955年）」に収録されたヒット曲。彼女のベスト盤を買うと必ず入ってる代表曲。後年、エラ・フィッツジェラルド、ダイナ・ワシントン、バーブラ・ストライザンドなども取り上げたジャズのスタンダード・ナンバーである。
●左の写真は、1955年の「Julie Is Her Name」と1958年の「同vol.2」を１枚にした、２on1のCD。1955年のセクシーなお姿は、左のほう。

●ジョーに続き、ブラッドまでバンド離脱という状況で作られたアルバム「Rck In A Hard Place」。曲が思うように書けないスティーブンが引っ張りだしてきたカバーだが、はっきり言って出来はイマイチ、イマニ。
●前半のけだるさのまま駆け抜ければ違ったかもしれないが、後半の無理な盛り上げが曲を破壊している。
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Dazed And Confused(Jimmy Page)
◎ライブのみ： 1994年来日公演-1998年ツアーで、Sweet Emotionの中で部分的に演奏。

★[Led Zeppelin / 1968-1980]
これまた説明不要の、近代ハードロックの開祖。

●1968年末発表のデビューアルバム、Ａ面ラスト（４曲目）を飾るナンバー。邦題「幻惑されて」。ジミー・ペイジ独特のボウイング奏法（バイオリンの弓でギターを弾く）を発揮する曲として有名。ライブの１つのハイライトであり、1975年にはこの曲だけで30分まで発展した。
●ジミー・ペイジが、ヤードバーズ時代からやっていた「I'm Confused」を発展させた曲。実はアメリカのシンガー・ソングライター、ジェイク・ホルムズの曲を改作したもの(1967の彼のアルバムにも入っている)。
●エアロスミスが演奏したのは、ボウイングが終わって主旋律に戻るところのパート。

●この曲を聴いたのは、1994年の武道館だ（このときに初めてプレーしたらしい）。原曲は何千回も聴いたのに、まさかＺＥＰをプレーするとは思わず「このメロディー、なんだっけなぁ？」と、曲が終わるまでわからなかった。アルバム「A Little South Of Sanity」には収録されていなかった。残念。
●ヤードバーズは何曲もカバーしているエアロスミスだが、レッド・ツェッペリンにはノー・タッチだった（影響を受けていないロックバンドが存在するかどうか疑問だが）。ZEPの影響を初めて公に認めた曲。後にHeartbreakerも演奏している。

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Heartbreaker(Jimm Page/Robert Plant/John Paul Jones/John Bonham)
◎ライブのみ：1998年後半Nine Lives Tourで部分的に演奏

★[Led Zeppelin / 1968-1980]
ブルースロックを基調にしながら、ハードロックという新しいカテゴリーを確率。全盛期には３時間を超す超人的なライブを披露した。演奏力もさることながら、ジミー・ペイジのスタジオ・マジック（録音技術）でファンを魅了した。

●1969年発表のセカンド「Led Zeppelin II」Ｂ面１曲目。1970年代初頭には、ライブで「Immigrant Song(移民の歌）」とメドレーで演奏された。曲のまん中にある、ギター・ソロのためのナンバーといえる。

●1998年後半のアメリカ・ツアーで登場。全世界中継されたインターネット・ライブでも演奏された。部分的とはいっても、長めに演奏。

●この曲をプロのバンドがカバーするとは…と度肝を抜かれた。レッド・ツェッペリンがロックンロールの殿堂入りするとき、ジミー・ペイジ本人に頼まれ司会を務めたスティーブンとジョーだからこそ許される「荒技」と申せましょう。オリジナルのイメージが強過ぎるこういう曲には挑戦しないもんです、普通は。比較的原曲に忠実に演奏。

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Helter Slelter(Lennon/McCartney)
◎スタジオ録音：アルバム「Pndora's Box」disc 3-17収録。1975年録音の未発表曲。1976-1978年にライブでも演奏。

★The Beatles [1960-1970]
このバンドは形容する言葉に困る。音楽の歴史を変えた4人組。

●1968年発表の２枚組アルバム[The Beatles（通称・ホワイト・アルバム）」に収録。既に解散の危機をはらんでいた時期で、バンド名がタイトルとなっているのも、初心に戻る意味があった。
●ギターをかきむしるようなイントロが印象的な、ポール・マッカトニー作のハードなナンバー。シャロン・テート殺害事件の現場でこの曲が流れていた…という伝説もある（伝説であって、事実とは限らない）。
●1976年にビートルズの２枚組編集盤「ロックン・ロール」が発売された時、「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」とダブルＡ面でシングルカットされた。

●アルバム「Toys」「Rocks」ごろのアウトテイク。出来は悪くないが未発表。同時期にビートルズのオリジナル盤がシングル発売されたため、オクラ入りしたのかもしれない。
●1976年秋のヨーロッパ・ツアーでは、ロンドン・ハマースミス公演のラストで演奏された(1977年の来日では登場せず）。1977年後半以降は、ショートバージョンになったTrain Kept A Rollin'とメドレーでプレーされ、コンサートの最後を飾っている。

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I Ain't Got You(Clarence Carter)
◎ライブのみ：アルバム「Live! Bootleg」に1973年のＦＭラジオライブ音源を収録。

★Yardbirds [1963-1968]
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジが次々に在籍したことで有名なブリティッシュ・ブルース・ロック・バンド。

●原曲は、シカゴ・ブルースのビリー・ボーイ・アーノルドが、1950年代半ばに録音した曲。
●ヤードバーズは、２枚目のシングル「Good Morning Little School Girl」のＢ面で発表。アメリカ盤ＬＰ「For Your Love」にも収録。ベスト盤を買うと「もれなくついてくる」初期の代表曲。ギターはエリック・クラプトン（左の写真は、Rhino盤「Yardbirds Greatest Hits 1964-1966」）。

●1973年４月にボストンのＦＭ局WCBNで演奏したテイクが「Live!Bootleg」に収められている。ヤードバーズのバージョンをお手本にしているが、イントロのギターの似せ方、間の取り方など、ハンパじゃない似せ方でニンマリさせられる。

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I'm Not Talking(Mose Allison)

◎ライブのみ：1994年12月19日、Mamakin Music Hallのこけら落とし公演で演奏。

★Yardbirds [1963-1968]
セールス的には、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズにかなわないが、後のロックにかなり影響を残したバンド。

●原曲は、モーゼ・アリソンのジャズ・ブルース。シカゴ・ブルースに比べ、陽気でリズミカル。手拍子もお忘れなくというタイプのナンバー。
●派手なイントロが特徴。ヤードバーズがお手本だが、この曲を弾いたのはジェフ・ベック。アメリカ盤ＬＰ「For Your Love」に収録。こちらもベスト盤には必ず入る代表曲の１つ。
●今聞いてもそれほど刺激を感じないだろうが、ベックのけたたましい盛り上げイントロは、当時かなりインパクトがあったはずだ。

●当日はアンコールで登場。この曲のイントロから、よくツボを抑えた演奏が披露された。ヤードバーズ好きなエアロスミスの特徴がよくでていた（このテイクは、ブートレッグＣＤで出回った）。

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I'm Down(Lennon/McCartney)
◎スタジオ録音：アルバム「Permanent Vacation」に収録。

★The Beatles [1960-1970]
当コーナー３回目の登場。

●1965年発売のシングル「Help!（ヘルプ）」のＢ面で登場。シャウトが決めてのにぎやかなナンバー。イギリス本国ではなぜかアルバム未収録だったが、コンサートのラストを飾る重要な曲であった。1966年のビートルズ来日公演でも演奏されている。
●現在はレア曲集「Past Masters vol.1」で聴くことができる。作曲はポール・マッカートニー。

●ビートルズへ３回目の挑戦。過去２曲はサントラ、オクラ入りとなったが、今回は無事にアルバム「パーマネント・バケーション」に収録された。原曲に忠実な、なかなかの好演奏。だがビートルズの原曲を知ってる人は口をそろえて言うのだ。「オリジナルのポールのシャウトには勝てなかった」と。挑戦した相手が悪かったというべきか。

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Love Me Two Times(Densmore/Kreiger/Manzarek/Morrison)
◎スタジオ録音：映画のサントラ・アルバム「Air America」に収録。Box Of Fireにも再収録された。

★The Doors [1967-1973]
カリスマ的ボーカリスト、ジム・モリソンを中心としたロス・アンゼルス出身の４人組。シュールな歌詞、個性的なステージで話題を集めたアートロックの旗手。1967年１月デビュー。第２弾シングル「ハートに火をつけて/Light My Fire」が大ヒット。1971年７月、モリソンがパリで変死。バンドは３人組で存続するが、1973年に解散。

●1967年11月発売のセカンドアルバム「まぼろしの世界/Strange Days」Ａ面３曲目に収録。これもベスト盤に必ず入ってくる代表曲。
●1960年代のアメリカンロックには、どちらかというと否定的なエアロだが、ドアーズは別格だそうだ。

●ベトナム戦争を背景にしたアクション映画「エア・アメリカ」のサウンドトラック(1990年）のＡ面１曲目に収録。このアルバムは、約半分は当時の録音、半分弱がカバー新録だった。
●これもオリジナルをいかしたカバー。ドアーズは、エアロが敬愛する数少ないアメリカのバンドの１つだから当然か。もともとプロ・デビュー前にステージで演奏していた曲の１曲。

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Milk Cow Blues(Kokomo Arnold)
◎スタジオ録音：アルバム「Draw The Line」の最後を飾るナンバー。エアロスミス初期からのレパートリー。

★The Kinks [1964-Present]
レイ＆デイブ・デイビス兄弟を中心に結成。最初はビート・グループとして登場。レイ・デイビスのファズをかけた独特のギターから“キンキー・サウンド”と呼ばれた。ヴァン・ヘイレンのカバーでも知られる「You Really Got Me」1964年がデビュー曲。
●途中から歌詞にイギリス的なウィットを散りばめたバンドに変身、ローリング・ストーンズとともに長寿バンドとなる。現在活動休止中。

●３枚目のアルバム「キンク・コントラバーシー/The Kink Kontroversy」のオープニングナンバー。このMilk Cow Bluesはハードに決めているが、完全なキンキー・サウンドは最初の２枚だけ。この３枚目からサウンドが変化し始める。

★Kokomo Arnold [1901-1968]
1934-38年に活躍。アコースティック・シカゴ・ブルースに区分される。左ききでボトルネック・ギターの名手＆ボーカリスト。わずか５年の活動後、引退し、製鉄所の労働に就いたとされる。
●同時代に活躍したブルースマンに、ロバート・ジョンソン（1938年死亡）、スリーピー・ジョン・エスティス（一度引退後、1960年代に復帰）がいる。

●この曲は、スリーピー・ジョン・エスティスのバージョンもあり、そっちをオリジナル作者と間違ってクレジットしてあるレコードも少なくない（キンクスはデイビス作となっている）。
●また1950年代には、Milk Cow Blues Boogieの題名で、エルビス・プレスリー、リッキー・ネルソンが、ロカビリー・バージョンを残している。

●エアロスミスが初期から演奏していた曲。1974年のＦＭライブで、この曲をジョーが歌っているテイクも残っている。またビデオ「テキサム・ジャム」では、飛び入りのテッド・ニュージェントとのジョイントが見られる。
●この曲も、イギリスからの逆輸入。キンクスのバージョンをもとにしてのカバー。聴き比べるとエアロ・バージョンのほうが圧倒的に強力だが、イントロのきざみ方などかなりキンクス版の影響が濃い。

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Mother Popcorn(James Brown)
◎ライブのみ：アルバム「Live! Bootleg」４面２曲目に、1973年のＦＭライブを収録。

★James Brown [1933-Present]
ファンクの帝王。ソウル、ブラック・ミュージック界の大物。
1950年代中期から活躍。R&Bをよりポピュラーな“ファンク”にした功績は大きく、後のディスコ、ラップ、ヒップ・ホップにまで影響していると言われる。ブラック・ミュージックの世界では、ゴッドファーザーと崇め奉られる存在。その反面で刑務所に入ったり、何かとお騒がせも起こす御方。

●ビルボード11位（同R&Bチャート1位)を記録した1969年の大ヒット。翌年発表のライブ「Sex Machine」では、アンコールを飾っている。アルバム「It's Mother」に収録ベスト盤を買うと、まず入っている代表曲の1つ。
●Live! Bootlegのテイクは、スティーブンのねちっこいボーカルが、ファンキーな感じをよく出している。

●こういうファンキーな曲をやってもさまになるところが、エアロスミスが他のハード・ロックバンドと一線を画しているところ。真似できないのが、ファンキーなベース＆ドラムスのリズム隊である。そんな一面をよく見せてくれるテイクが、Live! Bootlegに残されている。これは必聴。

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Peter Gunn Theme（Henry Mancini)
◎ライブのみ：Sweet Emotionの中で演奏。

★Duane Eddy [1938/04/26-]
1950-1960年代にヒットを飛ばしたギター・インストの名手。体にズンズン響く独特の音色は「Twangy(トワンギー） Sound」と呼ばれた。

●ＴＶのテーマ曲「ピーター・ガン」のカバー。1959年のヒット。ギター・インストのクラシックとして有名。
●名プロデューサー、リー・ヘイゼルウッドに見いだされたギタリストがデュアン・エディ。彼と組んで、看板となるトワンギー・サウンドを開発。
●リー・ヘイゼルウッドはさまざまなサーフィン・サウンドを仕掛け、1960年代にはナンシー・シナトラと組んで、デュエット・ソング「サマー・ワイン」をヒットさせた平尾昌晃の大先輩。山下達郎・大滝詠一がアメリカンポップス史を語る時、必ず登場する名前だ。

★Henry Mancini [1924-1994/06/14]
「ティファニーで朝食を（ムーン・リバー）」「ピンク・パンサー」「シャレード」「ひまわり」「刑事コロンボのテーマ」などを手掛けた、アメリカを代表する映画音楽作曲家。「ピーター・ガン」は彼の処女作。

●ハリウッドの音楽アレンジャーだったマンシーニが散髪に行ったとき、プロデューサーにばったり。「今度やる探偵ドラマの音楽を書くやつを探してるんだ」「……僕にぜひやらせてください」。
●探偵のピーターが遊びに行くジャズ・クラブの音楽を書いたら、かっこいいテーマが仕上がった。サントラＬＰを出したら、だーれも期待してないのに、いきなりビルボード第１位。これをデュアン・エディが、ロックギターでカバーしたわけだ。

●エアロスミスの「ピーター・ガン」は、ディアン・エディ版をお手本にしている。時代を越えてやっぱカッコいいですよ、この曲は。コンサートの最後に「大見得を切る」ギター・ソロに最適。なかなか選曲のセンスがよろしい。
●これもクラブ時代に演奏したレパートリーの１つ。
※関連記事：Walk This Way P.130

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Rattlesnake Shake(Peter Green)
◎ライブのみ：アルバム「Pandora's Box」に、1973-1974年ごろのライブを収録。

★Fleetwood Mac [1967-Present]
ジョン・メイオール＆ブルース・ブレイカーズにいたメンバーが中心となって、結成されたブルース・ロック・バンド。ただしバンドの核であるギタリスト、ピーター・グリーン、ジェレミー・スペンサーが次々脱退してしまい、サウンドを目まぐるしく変化させて活動を続行した。
フリートウッド・マックについては別項参照。

●ジョーが影響を受けたギタリスト、ピーター・グリーンがフリートウッド・マックに最後に残したアルバム「The Play On」に収録。
●エアロスミスは、この曲と一緒に収録された「Searching For Madge」「Fighting For Madge」という２曲をくっつけ、10分近いバージョンに仕上げている。

●原曲が意外にあっさりしているのに比べ、エアロ版はテンポも重々しく、スケールの大きな演奏にしている。「Searching For Madge」を中間部のジャムに使うというアイデアも秀逸。
●この「Madge」のメインリフは、後に「Rats In The Cellar」のクライマックスに使われている。

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Red House(Hendrix)
◎ライブのみ：ジョー・ペリーがステージで歌うソロ・ナンバー。

★Jimi Hendrix [1942/11/27-1970/09/18]
サウスポーながら、右利き用のギターを掻き鳴らす独特のプレーでファンを魅了した天才ギタリスト。
●1960年代前半からセッションマンとして活躍したが、アニマルズのチャス・チャンドラーに見いだされ渡英。イギリスでデビューする。ジミ・ヘンドリックス＆エクスペリエンスとして1967年「ヘイ・ジョー」「紫のけむり／Perple Haze」などを全英トップ10に。
●歯でギターを弾くなど、独特のパフォーマンスでカリスマ性を発揮。1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルでは、ギターに火をつけるという荒技も見せた。1970年、わずか27歳で死去。
●「アー・ユー・エクスペリエンス」収録のナンバー。ベスト盤に必ず入る代表曲の１つ。

●1960年代のアメリカン・ロックはあまり評価しないエアロスミスだが、イギリスに渡ったジミ・ヘンドリックスは別格。
●ステージで、ジョーが歌うナンバーの１つ。他の曲に比べると、比較的アレンジされている。

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Remember(Walking In The Sand)(George "Shadow"Morton)
◎スタジオ録音：アルバム「Night In The Ruts」に収録。

★The Shangli-Las [1963-1969]
●シェリルズ、ロネッツと並ぶ1960年代ガールグループの１つ。双子のマージ＆メアリー・アン・ガンサーと、メアリー＆ベティ・ウェイス姉妹で結成。１人抜けた後も３人で活動を続けた。
●「リメンバー（渚の想い出）」は1964年末に全米トップ５ヒット。ナンバー１の「リーダー・オブ・ザ・パック」など、ヒット曲も多数。アカペラコーラスによるダイナミックな盛り上げを効果的に使った曲を得意をした。

●これはスティーブンのお気に入りのガール・グループ。自伝：Walk This Wayにも、テレビ番組で共演したときのトイレでのエピソードを楽しそうに語っている。

●「ナイト・イン・ザ・ラッツ」で演奏。シャングリ・ラスの大ファンだったスティーブンによって、引っ張りだされた曲だが…ちょいと選曲ミスか。

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Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogiw Flu(Smith/Vincent)
◎スタジオ録音：サントラ「Less Than Zero」に収録。後に「Box of Fire」ボーナスディスクにも再収録。

★Huey "Piano" Smith [1934/01/26-]
ニュー・オーリンズR&Bのボーカル＆ピアニスト。1950年代前半－1960年代中期に活躍。自らのバンド、ヒューイ“ピアノ”ルイス＆ザ・クラウンズでのヒット、「Rockn' Pneumonia and the Boogiee Woogie Flu」は1959年にビルボードR&Bチャート５位を記録。もう１曲「Don't You Just Know It」が1958年にR&B４位、ポップチャートで９位に。

●左のジャケは英国エドセルが発売した彼のファースト・アルバムのリイシュー盤「Having A Good Time」から。
●カバーは多く、ブリティッシュ勢では、P.J.プロビー、クリス・ファーロウらも録音しているが、エアロスミスとの因果関係は不明。

●RUN D.M.C.との共演を仕掛けたリック・ルービンがプロデュースしたサントラ「レス・ザン・ゼロ」に収録されたナンバー。なんでこの曲を選んだのか、ご存じの方はご教授ください。関係がわからなかった１曲。

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Stop Messin' Round(Peter Green)
◎ライブのみ：ジョーがステージで好んで歌うナンバー。

★Fleetwood Mac [1967-Present]
エリック・クラプトン＆ヤードバーズ、ジョン・メイオール＆ブルース・ブレイカーズを続いた、ブリティッシュ・ブルースの流れを継いだバンド。
フリートウッド・マックについては別項参照。

●ジョー・ペリーは、このバンドの母体となるブルース・ブレイカーズなども好んで聴いていたようだ。その中から独自のグループを築いたピーター・グリーンも大のお気に入り。
●これはアメリカでの３枚目「英吉利の薔薇／English Rose」のオープニング・ナンバー。ステージでは、スティーブンに「ジョー・ペリーが死ぬ気で歌います」と紹介を受けて演奏するソロ・ナンバーとしておなじみ。

●ジョーの味のあるボーカルが聴けるナンバー。公式録音が発表されていないのが残念。

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Stranger In The Night(Laempfert/Singleton/Snyder)
◎ライブのみ：Live! Bootleg 収録のTrain Kept A Rollin'の中で演奏。

★Frank Sinatra [1915/12/12-1998/05/14]
エルビス・プレスリーとともに、1950-1960年代の「アメリカの顔」だった国民的大スター。ジャズ歌手、後に映画俳優としても成功。「Peter Gunn」の項目に登場したナンシー・シナトラは実の娘。

●ヒットは多いが、中でも「マイ・ウェイ」と並ぶ代表曲。1966年の映画「ダイヤモンド作戦（A Man Could Get Killed)」のテーマ。
●1960年代は事業家に転身して「リプリーズ・レコード」を設立したフランク。しかし業績が振るわず、ヒットが出ないと会社がヤバイという状況で、社長自ら起死回生を狙った入魂の一撃。これが彼のカムバック・ヒットとなり、会社も安泰。この後、彼はリプリーズ・レコードを売却している。

●これは影響を受けたというより、遊びの部分。ジミ・ヘンドリックスがモンタレーのステージで、アメリカ国歌「星条旗よ永遠なれ」をガリガリのロック・ギターで演奏した…というのを同じミスマッチ感覚の産物。だれでも知ってるスタンダード・ナンバーじゃないと、このミスマッチ感覚は生まれないのだ。

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Train Kept A Rollin' (T.Bradshaw/L. Mann/H. Kay)
◎スタジオ録音:1974年発表「Get Your Wings(飛べ！エアロスミス)」収録。
エアロスミス結成～1978懇ろまでは、ステージのハイライトを飾った代表曲の１つ。

★The Yardbirds [1963-1968]
キース・レルフ、エリック・クラプトン、ポール・サミュエル・スミス、クリス・ドレヤ、ジム・マッカーティの５人組。クラプトン脱退後にジェフ・ベック、ジミー・ペイジが加入。ヤードバーズについては。別項参照。

●アメリカにおけるセカンド・アルバム「Having A Rave Up」に収録。ギターはジェフ・ベック。汽笛のイントロ、カッコいいギターリフは、ジェフ＆ヤードバーズ版で初めて登場した。歌詞こそ同じだが、メロディー自体はヤードバーズのオリジナルといってもいいほどに改作されている。
●エアロ結成時から1977年の初来日ごろまで、コンサートのハイライトを飾っていた曲。ヤードバーズ版を忠実にトレースしている。ジョーのギター・ソロも、ジェフ・ベック版に敬意を表して（？）かなり原典に忠実だ。

★Tiny Bradshaw [1905-1958]
タイニー・ブラッドショウの活躍期は２つに分けられる。まず1930年代－1940年代中盤はシンガー＆ドラマーとしてホレス・ヘンダーソン楽団などで活躍。1950年代は自らのオーケストラの率い、ジャンプ・ブルースのシンガーとしてヒットを残す。「Big 10 Inch Record」をBull Moose Jacksonとともに録音している。

●この曲は1950年代にタイニー・ブラッドショウが発表、1956年ジョニー・バーネット＆ロックン・ロール・トリオがロカビリー版、そして1965年にヤードバーズがロック版を録音。ほかにもレッド・ツェッペリン、ハノイ・ロックスなどもステージで演奏している。

●原曲はロックン・ロール以前の黒人音楽、ジャンプ・ブルースでカバーも多い。1966年発表のヤードバーズ版で現在の形に改良された。ジョーによれば「俺たちがエアロスミスとして最初にプレーしたかった曲の一つ」という、まさにエアロの原点である。
●わずか３分の小曲を、エアロはスローとアップテンポで「２回繰り返し演奏」するアイデアにより、ステージ映えするヘビー・ナンバーに昇華させている。エアロスミスの代表曲の１つ。

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Think About It(K. Relf/J. McCarty/J. Page)
◎スタジオ録音:アルバム「Night In The Ruts」収録。ライブでは結成当初と、1980年代前半にも演奏された。

それほど有名な曲ではなく、かなりマニアックな選曲と言える。1970年代には入手困難な
曲だったが、今はのボーナストラックで聴ける。
ヤードバーズについては。別項参照。

★The Yardbirds [1963-1968]
ブルース・バンドから、サイケ、ハード・ロック創世紀を駆け抜けたバンド。ヤードバーズについては。別項参照。

●ヤードバース最後のシングル、1968年の「Goodnight Sweet Josephine」のＢ面曲。このシングルは全然ヒットしなかったが、スティーブンはお気に入りでレコードが擦り切れるまで聴いていたらしい。アルバム未収録だが、現在はヤードバーズのﾗｽﾄアルバム「Little Games」のボーナストラックとして収録。
●既にヤードバーズ解散目前、限界に来ていることを如実に表した曲。新時代のハード・ロックへ傾いているジミー・ペイジのギターと、キース・レルフのボーカルが何ともアンバランス。

●スティーブンが曲が書けなくなった「ナイト・イン・ザ・ラッツ」セッションで、ストックから引っ張りだされてきた結成当時のレパートリー。ジョーの火をを吹くような中間部のソロが聞き物。このソロの入り方も、かなりジミー・ペイジのオリジナルに忠実。
●イントロでのツイン・リードなど少々アレンジがオーバー（録音が完成した時には、既にジョーは脱退していたわけだが）。この曲に関しては原曲の勝ち。

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Walking The Dog(Rufus Thomas)
◎スタジオ録音：ファースト「Aerosmith」Ｂ面４曲目に収録。初期のライブ・レパートリー。

★Rufus Thomas [1917/05/26-]
1930年代にコメディアンとして芸能界に入り、1940年代にはメンフィスで黒人音楽専門曲のラジオＤＪとして活躍。1953年に歌手として初ヒット「Bear Cat」を出す。ロックン・ロール創世紀から活躍したR&B、ソウル・シンガー。後にソウル・ミュージックの総本山の１つ、スタックス・レコードに移籍し看板スターに。

●1963年のトップ10ヒットで、ルーファス・トーマスの代表曲。ローリング・ストーンズも、いち早くデビュー・アルバムで取り上げている。後年、ロジャー・ダルトリー（ザ・フー）や、トロッグスなどもカバーした。

●エアロスミスは、ファースト録音時に「メジャー・バーブラ」をボツにしたため、代わりにこれを録音した。
●1963年のヒットのため、スティーブンたちはローリング・ストーンズのカバーを聴く前から、原曲を知っていたと思われる。が、ファースト・アルバムが、ヤードバーズよりストーンズのテイストに近いことを考慮すると、初期ストーンズの持っているブラック・ミュージックの要素もこの曲を選ぶきっかけになったのでは…などと想像してしまう。

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補習：Bluesについて

●ブルースと一口に言っても100年からの歴史があり、本１冊でも納まらないほどの情報量がある。
元々は1800年代の末、アフリカ系アメリカ人（奴隷としてつれてこられた黒人）の伝承するアフリカ音楽をベースに発祥した。これが時代により、土地により細分化し,ジャズ、ゴスペルと枝分かれしていくのである。
●All Music Guideで検索しても、Bluesという単語で、デルタ、メンフィス、シカゴ、イースト・コースト、ウエスト・コーストと、多くのカテゴリーが登場する。また時代により（レコード創世紀の）1920-1930年代がアコースティック、1940-1960年代にエレクトリック・ブルース、1980年代以降がモダン・ブルースと区別されている。

●その中でロック、エアロスミスと特に関係が深いのが、次の２つ。
◎シカゴ・ブルース
代表例：Led Zeppelinの「I Can't Quit You Baby」「You Shook Me」
1950-1960年代、エレキ・ギターの時代に入ったシカゴ派のブルース。特にチェス・レコードには、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、ボ・ディドリー、エッタ・ジェームズ、ソニー・ボーイ・ウィリアムソン２世などのシカゴ派の代表が契約していた。ブリティッシュ・ブルース・ロックのバンドによくカバーされており、レッド・ツェッペリンの伝記を読む「影響を受けたミュージシャン」として必ずでてくる。
ヤードバーズのコーナーでも触れたが、シカゴ派のブルースマンが1950年代末からイギリスに出稼ぎ公演を行い、ブリティッシュ・ブルース・ロック誕生の種をまいていた。そして、ヤードバーズなど第２世代の音楽を聴いて、逆輸入の形でブルースの洗礼を受けたのが、エアロスミス世代のミュージシャンである。

◎ジャンプ・ブルース
代表例：エアロスミスの「Big 10 Inch Record」
1940年代にイースト・コースト（ニューヨーク派）から出たスタイル。アップテンポでジャズ風味。ジャズといっても、ビッグバンドほどの大編成ではなく、コンボ程度をバックに、陽気に歌って踊るタイプ。
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あきら教授からひと言

●12月７日から連載を始めて、何とか完成を見たのが12月19日の深夜じゃ。ロックを聴き始めて25年、もうぼちぼちこの記事に着手してもよかろう…と思ったが、やはり苦戦したわい。

ＣＤのライナー・ノーツでカバー・ソングが紹介される時、お手軽に原作者の名前紹介だけで終わってしまう場合が多い。この記事の主眼は、だれが原曲をプレーしたかではなく、「だれの演奏がエアロスミスに影響を与えたか」という点じゃ。

ありがたいことに、連載中にもかなり反響をもらって、大変心強かった。正直に言えば、ワシもこの記事の全部が頭に入っているわけではない。アヤシイところが多くて、All Music Guideで一件一件調べながら記事をまとめていったのじゃ。
書きながら毎日推敲を重ねて、最初の文章とは違うモノになっている箇所もある。毎日見てくれた人は気付いたと思うが、All My Loveは最初オーティス・ラッシュしか触れておらず、途中でブルース・ブレイカーズを追加したのだ。ブルースについてのカテゴリー分類も、All Music Guideを参考にしておる。ただ、どの箇所も丸写しにはならないように注意はしたつもりじゃ。

この記事をまとめた今、１つの結論が導き出される。
「アメリカのブルースをお手本に、新たなエレクトリック・ブルースに挑戦した1960年代のブルティッシュ・ビート・グループが、エアロスミスのお手本であった」。
「Walk This Way：エアロスミス自伝」を読めばだいたいわかることじゃが、ここでは具体的なお手本の紹介も合わせて行った。教授の講義は長くなるのが欠点なので、掲載したスリーブ（ジャケット）の大きさに対応した文面で、簡潔にまとめるようには工夫してある。

まだまだワシも「Walk This Way」の読み込みが足らないようじゃ。対応するページ等々の不可要素は、今後も追加していくつもりでおる。
また文中でも繰り返し触れているが、もし「オリジナルを聴こう」という時には、作者に戻る前に、エアロスミスが手本としたブリティッシュのサウンドに触れて欲しい。時間があれば、またその祖先もたどってもらえれば幸いじゃ。幸運にも諸君の回りに30-40歳台のロックファンがいて、そのライブラリーを聞かせてもらう機会があったら、挑戦してもらいたい。

これは全部覚える必要はない知識じゃ。なんかどっかで聴いた名前だな…と思った時に、辞書代わりにここで検索してもらえたら幸いに思う。

[1999/12/19]