The Train Kept A Rollin'とJeff's Boogieについての質問メールがかなり来てるので、
個々にお返事しないかわりに、このページで答えちゃいます。
バンドとしてのヤードバーズの歴史と説明は、教授講義編を参照。

まず、短いほうから。
大阪1/27のアンコール前、2/3東京AF1イベント（サウンドチェック・パーティー）で演奏した、
Jeff's Boogieって、ドコに入ってますか…という質問。
もちろんAerosmithとしての公式録音はありません。
Jeff's…って題名のとおり、Jeff BeckがThe Yardbirds時代に発表した曲で、
初出は1966年のRoger The Engineerというアルバム。
チャッチャッチャララ…という陽気なリフが印象的だけど、緩急つけてソロギターが入るので、
かなりテクも必要な曲。
ジェフ・ベックは、ヤードバーズ後も、ベック・ボガート＆アピス時代をはじめ、ステージでも
たびたび演奏している。

エアロの演奏は両日とも、スティーブンがステージに現れる前、ほかの４人が揃ったところで、
ジョーがいきなり始めてました。スティーブン待ちの時間の「豪華な余興」ってところ。

Roger The Engineer （正式な題名はThe Yardbirdだが、イラストに書いてある文字からついた通称Roger The Engineerのほうが一般的） イギリス発売では、ジェフ・ベック期唯一のオリジナルアルバム（ほかはシングルやEP。アメリカではアルバムが２枚と半分ある）。 イギリス原盤は12曲入りだが、現在はシングル曲Happenings Ten Years Time AgoとPsycho Daisiesの2曲を追加収録。LP時代は、モノラル盤とステレオ盤で一部テイクが違う。 Jeff's Boogieなど代表曲は下で紹介するベストにも収録。

The Train Kept A Rollin'
多い質問は以下の３つ
1. 原曲は誰ですか？
2. 歌詞の違う曲があるそうですが…。
3. ヤードバースのお薦めアルバムはどれですか？

1.エアロスミス版のお手本はヤードバーズ版
原曲については、Coversでも紹介してるんだけど、その後に調べたこともあわせて補足。
最初にレコードにしたのは、タイニー・ブラッドショウ楽団（彼は作曲者の１人）。
チャック・ベリーらによるロックンロール誕生以前の曲（1950年ごろ）なので、ジャンプ
ブルース調、現在の感覚からいくと超スローテンポ。
♪ばっでぅでー、おーないろーん…という歌いだしてから始まる、陽気でノンキな展開の
ダンスミュージック。

ロックンロール誕生を経ての改作が、1956年のジョニー・バーネット＆ロックン・ロール・
トリオの録音。Honey HushというシングルのB面で発表したんだけど、この時アップ
テンポに。現在のスタイルの原型は感じられるけど、これもエアロスミス版とはほど遠い。

そして３代目にして、この曲を有名にしちゃったのが、Jeff Beck時代のヤードバーズ。
雑誌レコード・コレクターズやロック・ジェットに載ったインタビューによると、「ジェフ・ベックが、
ジョニー・バーネットのシングル盤を持っていて、この曲をやろうと言い出した」らしい。

ジェフ・ベックのバージョンで、♪ちゃーららー、ちゃらららー…という機関車の汽笛の
音をイメージさせるイントロになり、ギターのリフやメロディーも現在の形になった。
最初のブラッドショウ版と比べると、歌詞は同じでもメロディー全然違う曲に進化してる。

ただし、３〜４分で終わってしまう曲なので、エアロスミスはGet Your Wingsのアルバムで
録音したように、最初スローテンポ＋ドラムソロ＋後半アップテンポでもう１回という
スタイルを考えて、初期のコンサートのハイライトにもっていった。
ライブでは曲のまん中にThe Batman Theme(バットマンのテーマ)や、Peter Gunnを
はさんだりして、いっそう強弱もつけている。
1977年の初来日のときは、まだこのスロー＋アップテンポの二部構成で、
後半にGet The Read Out〜Batmanをはさんでいた。

余談その１
Batmanをはさんだのは、キンクス(The Kinks)の影響。ジョーが当時よく聴いたアルバムに
挙げているKinksのライブ・アット・ケルビンホールという実況録音盤で、
Milk Cow Blues〜Batman〜Milk Cow Bluesのメドレーを演奏してる。
同じMilk Cow Bluesではなく、Train Kept A Rollin'にBatmanを組み入れたのは、
エアロスミスの工夫というべきか？　好きなバンドはとことん真似るのがエアロらしいところ。

2. 歌詞が違う曲はStroll On

1966年、ヤードバーズはミケンランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望(Blow-Up)」に
出演した。殺人現場を目撃したかもしれない…してないかもしれない主人公のカメラマンが、
カギを握る女を追いかけてロンドンを走り回るというカルトな映画。そのライブハウスのシーンで、
ジェフ・ベック＆ジミー・ペイジ、ギタリスト２人在籍時のヤードバーズがチラリと出演する。
当時のスインギン・ロンドン、モッズ風俗を背景にした映画で、最初はザ・フーに出演依頼したが、
断られて代わりにヤードバーズが出たらしい。
（しかし…雑誌ロックジェットで特集されてる面々がよく登場する記事だな）。

ザ・フーに出演依頼したのは、流行だったモッズ・ムーブメントとともに、ピート・タウンゼントの
「ギター破壊」を撮りたかったらしい。代役なのでジェフ・ベックが破壊することになり、
いやいや（？）日本製の安物ギターを粉砕して客席に投げ入れている。

このとき、ギター破壊するくらいだから、一番ハードな曲を…とTrain Kept A Rollin'が候補に
のぼったのだが、曲の使用料が高くてこれは断念する羽目になった。
ところが…上の文章をもう１回見てほしい。原曲ブラッドショウ版−改作ヤードバーズ版、
歌詞は同じだがメロディーは別もの。
「メロディーはヤードバーズのオリジナルなんだから、新しい歌詞をのせてしまえば新曲扱い」。

この理屈で作られたのが、Stroll Onという曲。誰でもヤードバーズ版Trainの焼き直しと
気づくのだが、原曲とは似ても似つかないメロディーなので、歌詞さえ違えばに著作権的に
文句がいえないという完全無敵の新曲ができあがった。

♪どんたっどどたっ、どんたっどどたっ…まず威勢のいいドラムス。
きゅうぃーん…と入るジェフ・ベックのフィードバック
後ろで、じゃんじゃかじゃか…とジミー・ペイジがリフを刻む。

このメンバーを、ジョーイ、ジョー、ブラッドに書き替えてきましょう。
長々書いてきましたが、先日のJust Push Play、前回のDragonツアーで演奏していた
エアロスミスのTrain Kept A Rollin'は、このStroll Onのイントロに乗せて演奏されてます。
つまり、ヤードバーズのTrain / Stroll Onの一番カッコイイ部分をよりすぐって演奏したわけ。

余談その２
エアロスミスのTrainは、大きくわけて３つのパターンがある。
１つ目が、上で書いたGet Your Wingsのような、初期のスロー＋アップテンポ繰り返し版。
２つ目が、Live! Bootlegで聴ける、いきなり威勢よく飛び出すバージョン（Live! Bootlegでは、
本当はその前のSame Old Song And Danceとメドレーで演奏されており、Trainメドレーの
部分だけを切り離して編集された）。この「せーの！」でドカーン！と走り出すバージョンは
1990年ごろのライブオープニングにも使われていた。
３つ目が、現在のような「どんたっ、どどたっ」のドラムで始まるStroll On混合型。

余談その３
Train / Stroll Onのパラドックスに気づいたバンドは、エアロスミスの他にもいくつかある。

まず海外では、Foghat / フォガット。Honey Hush（ジョニー・バーネットがTrain Kept A
Rollin'のシングルのＡ面でやった曲！）をステージで演奏する時、
歌詞がHoney HushでリフがTrainという荒技をやってのけた。しかも、ギターソロは
ジェフ・ベック版を元にするという凝りよう。アルバムLive Foghatに収録の痛快なナンバー。

日本では、鮎川誠のサンハウス / シーナ＆ロケッツの「レモン・ティー」。
しかも歌詞が「絞って、僕のレモンを。あなたの紅茶の中に」と、レッド・ツェッペリンの
「レモン・ソング」の歌詞をモチーフにしてる。ここまで研究しつくして演奏されると、
もはやパクリという低次元なレベルではなく、見事にトリビュートにまで昇華してる。
これも大好きな曲。

3. ヤードバーズのお薦めCD

Yarbirdsの項にも書いたが、ヤードバーズは時代的に3人のマネージャーにわかれており、
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジという3大ギタリスト全員をおさえた編集盤が
発売されない(日本盤では現在なし)。
そんな中、ちょっと手に入れにくいけど現在は２つのオールタイムベストが発売されている。
※注意)ヤードバーズは、かなり似た名前のベストが出ているので、題名だけでな
く曲目・ジャケットの写真も確認してご購入ください。

The Yardbirds / Ultimate! 去年(2001年)発売の、2枚組み全52曲のアンソロジー。 56ページの写真満載ブックレット付き、決定版的な内容。 製作は、アンソロジーの名作を数々発売してきたアメリカのRIHINOレコード。1960年代の録音なので、あまり保存テープの状態がいいとはいえないが、可能な限りベストの音質で収録しているし、選曲も年代順収録申し分ない。 東京の輸入盤店にも入荷が少ないない上、4000〜5000円もするので、Amazonの通販のほうがお得かもしれない(曲の視聴もあり)。

Disc.1 1. Boom Boom 2. Honey In Your Hips 3. A Certain Girl 4. I Wish You Would 5. Too Much Monkey Business (Live) 6. I Got Love If You Want It (Live) 7. Smokestack Lightning (Live) 8. Here 'Tis (Live) 9. Good Morning Little School Girl 10. Got To Hurry 11. I Ain't Got You 12. For Your Love...以上、エリック・クラプトン期 13. I'm Not Talking 14. Steeled Blues 15. Heart Full Of Soul 16. I Ain't Done Wrong 17. You're Better Man Than I 18. Shapes Of Things 19. The Train Kept A Rollin' 20. New York City Blues 21. Evil Hearted You 22. I'm A Man 23. Still I'm Sad 24. Questa Volta 25. Pafff…Bum 太字はエアロスミスがカバー、演奏した曲

Disc.2 1. Lost Woman 2. Over Under Sideways Down 3. The Nazz Are Blue 4. I Can't Make Your Way 5. Rack My Mind 6. Hot House Of Omagarashid 7. Jeff's Boogie 8. Here's Always There 9. Turn Into Earth 10. What Do You Want...以上・ジェフ・ベック期 11. Happenings Ten Years Time Ago 12. Psycho Daisies 13. Stroll On...以上、ベック＆ペイジ共演時代 14. Little Games (Single Version) 15. Puzzles 16. White Summer 17. Tinker, Tailor, Soldier, Sailor 18. No Excess Baggage 19. Drinking Muddy Waters 20. Only The Black Rose 21. Ten Little Indians 22. Ha Ha Said The Clown 23. Godnight Sweet Josephine (Single Version) 24. Think About It...以上ジミー・ペイジ期 25. Knowing (Kieth Relf) 26. Mr. Zero (Kieth Relf) 27. Shapese In My Mind (Kieth Relf)

Over Under Sideways Down ジョー・ペリー・プロジェクトのベスト盤を出したオーストラリアのRAVEN盤。1枚28曲、シングル曲A/B面を中心に、ほぼ発売順番(アメリカ順番)でコンパクトに並べたもの。 音質的には、RHINOとは逆の考え方で、1960年代当時のゴリゴリしたオリジナルそのままの音で再現してくれる好企画盤。ただし、Jeff's Boogieは入っていない。 東京でも、最近では渋谷HMVでしか見かけない(3400円弱)。1枚で聴けるということで僕の愛聴盤なのだが…これから買う方には、値段がたいして変わらないので、上のUltimate!のほうを推薦。

1. Baby What's Wrong 2. I Wish Your Would 3. A Cirtail Girl 4. Good Morning Little School Girl 5. Got Love If You Want It (Live) 6. I Ain't Got You 7. I'm Not Talking 8. The Train Kept A Rollin' 9. I Ain't Done Wrong 10. For Your Love 11. Heart Full Of Soul 12. Evil Hearted you 13. Still I'm Sad 14. I'm A Man 15. Shapes Of Things 16. Over Under Sideways Down 17. You're Better Man Than I 18. Happenings Ten Years Time Ago 19. The Nazz Are Blue 20. Rack My Mind 21. Psyco Daisies 22. Stroll On 23. Little Gamese 24. Puzzules 25. Drinking Muddy Waters 26. Tinker Tailor Soldier Sailor 27. Ten Little Indians 28. Think About It