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エアロスミスのルーツとして見逃せないフリートウッド・マックじゃが、 聞きかじりの知識で中期−後期のベスト盤を買って「撃沈」するファンが後を絶たん。 エアロスミスに影響を与えたのは、初期(1967-1970年)のフリートウッド・マックであるぞ。 |
![]() ●エアロスミスがカバーしたフリートウッド・マックの曲。
フリートウッド・マック(1967年7月−2003年現在、再始動) ●数々のメンバー・チェンジを繰り返しながら、結成30年を突破したフリートウッド・マック。その歴史に名を連ねた人間は20名を超える。メンバーの加入と離散により、サウンドを万華鏡のように変化させた不思議なバンドだ。30余年の歴史をすべて見て来たのが、バンド名にもなっているミック・フリートウッドとジョン・マクビーという2人のオリジナル・メンバー。
●特に有名なのが、1975年の「Fleetwood Mac(邦題=ファンタスティック・マック)」と、翌1976年発表で全米チャート1位31週を記録した怪物アルバム「Rumours(噂)」だ。 この黄金期のメンバーは、スティービー・ニックスとクリスティーン・マクビーという女性2人とリンジー・バッキンガム、そしてミックとジョンの5人組編成。 ●エアロスミスと関係があるのは、ジョーのアイドルの1人であるギタリスト、ピーター・グリーンが在籍した1967年〜1969年の第1期マック。ここがポイント。 ●歴史 フリートウッド・マックは1967年7月結成。ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズでエリック・クラプトン(クリーム結成のために脱退)の後任を務めたピーター・グリーンが、同じくブレイカーズのドラムス、ミック・フリートウッド、ベースのジョン・マクビーを軸にジェレミー・スペンサーを加えて結成された(ベースでボブ・ブラニングも2か月在籍)。
ピーター・グリーン在籍時のアルバムは以下のとおり(後年の発掘音源は除く)。 ヤードバーズ同様、イギリスとアメリカで編集が異なるので両方を記します。 ●イギリス原盤 1968 : Peter Green's Fleetwood Mac 1968 : Mr. Wonderful [Stop Messin' Round 収録] 1669 : The Pious Bird Of The Good Omen 1969 : Then Play On [Rattlesnake Shake, Searching For Madge 収録=14曲版] 1969 : Blues Jam At Chess ●アメリカ編集盤 1968 : Peter Green's Fleetwood Mac 1969 : English Rose [Stop Messin' Round 収録=編集盤] 1969 : Then Play On [Rattlesnake Shake, Searching For Madge 収録=12曲版] 1971 : The Original Fleetwood Mac [アメリカでの未発表曲集] ☆ブリティッシュ・ブルースの第3世代 ●かつてジョーは、インタビューでこんなことを語っていた。 「今はアメリカのブルースのよさも分かるけど、当時の若い俺たちには退屈でね。 ブルースでも、イギリスでやったバンドはかっこよくて好きだった」。 ●ヤードバーズのコーナーでも触れたが、アレクシス・コナー、シリル・デイビスがまいたイギリスのブルース・ムーブメントは、ローリング・ストーンズ、アニマルズやヤードバーズ、マンフレッド・マンといった、アレクシスたちと直接共演した「第2世代」のバンドを経て、その影響を受けた第3世代へと受け継がれていく。その第3世代(いうなれは孫)が、このフリートウッド・マックやテン・イヤーズ・アフター、サボイ・ブラウンといった1968年ごろに始動したバンド。 ●フリートウッド・マックも、アメリカの本場ブルースをかなり意識した音づくりだった。ピーター・グリーンとジェレミー・スペンサーという2人の歌えるギタリストのコンビが、本場のブルースマン、エルモア・ジェイムズやライトニン・ホプキンスをお手本に、エレキ・ギターで硬質なブルース・サウンドに挑戦している。ジョーのスライドギターもこのへんの影響が感じられる部分がかなりある。 ●CBS傘下のBlue Horizonと契約したフリートウッド・マックは、1967年11月にシングル「I Believe My Time Ain't Long」でレコードデビュー。翌1968年2月にはわずか4日で録音したファースト・アルバム「Peter Green's Fleetwood Mac」を発売。半分が本場アメリカ・ブルースのカバーというこのアルバムは、全英チャート4位にランクされる大ヒットを記録。幸先のいいスタートを切った。 ●そして「Stop Messin' Round」収録のセカンド・アルバムが登場する。
●いきなりトンデモないお顔を2発もお見せしましてすんません。文句がある方は、ミック・フリートウッドおぢさんに言ってください。なにを考えてたんでしょ、この人。 ●どちらでも「Stop Messin' Round」が聴ける。「ミスター・ワンダフル」は全編ブルース。アメリカ盤「英吉利の薔薇」は、LPのA面(CDでは最初の6曲)が「ミスター・ワンダフル」からの選曲。B面に全英ナンバー1ヒットのインスト曲「アルバトロス(あほうどり)」、後年ラテン・ロックのサンタナがリバイバルヒットさせた「ブラック・マジック・ウーマン」などのシングル曲を収録。こちらもなかなか捨てがたい。 ●「ピーター・グリーンズ・フリートウッド・マック」「ミスター・ワンダフル」と、2枚とも全英トップ10入りというヒットアルバムを出した後、突如イミディエイト・レコードに移籍。「マン・オブ・ザ・ワールド」というシングルを1枚を残し、今度はリプリーズに移籍する。待遇面(ギャランティー)の問題だったと言われる。イギリスでは古巣のブルー・ホライゾンが、シングル発売曲を集めた編集盤「聖なる鳥」(The Pious Bird Of The Good Omen)を1969年に出し、これが3枚目に数えられている。で、リプリーズ移籍第1弾が、1969年9月発表の「Then Play On」。
●過渡期の作品で、前作までブルース一直線の部分とポップな曲が雑然と並んでいる。「統一感がない」という声もあるが、どうしてなかなか名曲そろいの好アルバム。3本のギターが絡み合う1曲目の「カミング・ユア・ウェイ」なんぞ、背筋がゾクっくる。 ●「パンドラの箱」収録の「Rattlesnake Shake」だが、ブックレットに1971年録音となっているが、これは誤り。同音源のブートレグLP、その名も「Rattlesaneke Shake」(AS1974)が出ており、この中で新曲を「ニューアルバム“ナイト・イン・ザ・ラッツ”から」と紹介している。 セカンドの「飛べ!エアロスミス」の仮題が「ナイト・イン・ザ・ラッツ」だったことは、自伝の「Walk This Way」にも記されている。ということは、仮題も決まった時期の1973年後半か1974年の初期の演奏だったわけだ。閑話休題。 ●その1974年ごろのエアロの「Rattlesanake Shake」だが、後半戦に入ってのギターバトルで「Rats In The Cellar」の最後で使われる、♪じゃかじゃかじゃかじゃかのフレーズが出てくる。一度使ってみたいというこのフレーズのアイデア自体はずっと前からあって、1976年「ロックス」の中の「Rats In The Cellar」で「やっと出口が見つかった」ということなんだろう。 実はジョーも、Walk This Way:エアロスミス自伝の中で、「Rats In The cellarは、Searching For Madgeのリフを基にしている」と証言している。 ●その「♪じゃかじゃかじゃかじゃかが、アメリカ盤LPと現在のCDで「Rattlesaneke Shake」の後ろに、メドレー風につながっている「Searching For Madge」「Fighting For Madge」という2曲。フリートウッド・マッが、この3曲をメドレーにして演奏している。1970年のボストン・ティー・パーティー(ボストンの有名ライブハウス)のライブやBBCライブが発売されているが、その中で聴くことができる。スティーブンが「ボストン・ティー・パーティーで、フリートウッド・マックを見た」ことも書いているので、この時期のマックの演奏は、ジョー・ヘッズには一度聴いてもらいたい気がする。 ●Rattlesnake Shakeは、Led Zeppelinの「Dazed And Cofused」なみに演奏30分というマックのコンサートのハイライトになっていた。その中フレーズを、ジョーがーは1990年前後のツアーで、Rats In The Cellarの中で再現している。マックとピーター・グリーンへのオマージュというところか。 ●このアルバム発表後、ピーター・グリーンが脱退。ソロ・アルバムを発表するが、その後は引退同然に。「墓彫り人夫をしている」という噂もあったが、1980年代以降、ときどき公の場にも顔を出している。またジェレミー・スペンサーもアメリカ・ツアー中にカルト教団に拉致され、そのまま脱退。ダニー・ワーカンもアルコール中毒でバンドを解雇。フロントマン2人を失ったフリートウッド・マックは、メンバーチェンジを繰り返しながら、生き長らえる道を模索していく。 ●以下の2枚は「エアロスミスのライバル」だった1970年代中期の超ド級のヒット作。エアロとは直接関係はないが、この2枚に触れないのはアンフェアだろう。
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