
●エアロスミスがカバーしたフリートウッド・マックの曲。
Rattlesnake Shake | Pandora's Box 収録 |
Stop Messin' Round | ジョーがステージで演奏 |
Searchin' For Madge | Rats In The Cellarの元ネタ |
フリートウッド・マック(1967年7月−現在・活動休止中)
●数々のメンバー・チェンジを繰り返しながら、結成30年を突破したフリートウッド・マック。
その歴史に名を連ねた人間は20名を超える。
メンバーの加入と離散により、サウンドを万華鏡のように変化させた不思議なバンドだ。
30余年の歴史をすべて見て来たのが、バンド名にもなっているミック・フリートウッドとジョン・
マクビーという2人のオリジナル・メンバーである。
●特に有名なのが、1975年の「Fleetwood Mac(邦題=ファンタスティック・マック)」と、
翌1976年発表で全米チャート1位31週を記録した怪物アルバム「Rumours(噂)」だ。
この黄金期のメンバーは、スティービー・ニックスとクリスティーン・マクビーという女性2人と
リンジー・バッキンガム、そしてミックとジョンの5人組編成。
●エアロスミスと関係があるのは、ジョーのアイドルの1人であるギタリスト、ピーター・グリーンが
在籍した1967年〜1969年の第1期マックなのである。ここがポイント。
●歴史
フリートウッド・マックは1967年7月結成。ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズで
エリック・クラプトン(クリーム結成のために脱退)の後任を務めたピーター・グリーンが、
同じくブレイカーズのドラムス、ミック・フリートウッド、ベースのジョン・マクビーを軸に
ジェレミー・スペンサーを加えて結成された(ベースでボブ・ブラニングも2か月在籍)。
ピーター・グリーン在籍時のアルバムは以下のとおり(後年の発掘音源は除く)。
ヤードバーズ同様、イギリスとアメリカで編集が異なるので両方を記す。
●イギリス原盤
1968 : Peter Green's Fleetwood Mac
1968 : Mr. Wonderful [Stop Messin' Round 収録]
1669 : The Pious Bird Of The Good Omen
1969 : Then Play On [Rattlesnake Shake, Searching For Madge 収録=14曲版]
1969 : Blues Jam At Chess
●アメリカ編集盤
1968 : Peter Green's Fleetwood Mac
1969 : English Rose [Stop Messin' Round 収録=編集盤]
1969 : Then Play On [Rattlesnake Shake, Searching For Madge 収録=12曲版]
1971 : The Original Fleetwood Mac [未発表曲集]
☆ブリティッシュ・ブルースの第3世代
●かつてジョーは、インタビューでこんなことを語っていた。
「今はアメリカのブルースのよさも分かるけど、当時の若い俺たちには退屈でね。
ブルースでも、イギリスでやったバンドはかっこよくて好きだった」。
●ヤードバーズのコーナーでも触れたが、アレクシス・コナー、シリル・デイビスがまいた
イギリスのブルース・ムーブメントは、ローリング・ストーンズ、アニマルズやヤードバーズ、
マンフレッド・マンといった、アレクシスたちと直接共演した「第2世代」のバンドを経て、
その影響を受けた第3世代へと受け継がれていく。
その第3世代(いうなれは孫)が、このフリートウッド・マックやテン・イヤーズ・アフター、
サボイ・ブラウンといった1968年ごろに始動したバンド。
●フリートウッド・マックも、アメリカの本場ブルースをかなり意識した音づくりだった。
ピーター・グリーンとジェレミー・スペンサーという2人の歌えるギタリストのコンビが、
本場のブルースマン、エルモア・ジェイムズやライトニン・ホプキンスをお手本に、
エレキ・ギターで硬質なブルース・サウンドに挑戦している。ジョーのスライドギターも
このへんの影響が感じられる部分がかなりある。
●CBS傘下のBlue Horizonと契約したフリートウッド・マックは、1967年11月に
シングル「I Believe My Time Ain't Long」でレコードデビュー。翌1968年2月には
わずか4日で録音したファースト・アルバム「Peter Green's Fleetwood Mac」を発売。
半分が本場アメリカ・ブルースのカバーというこのアルバムは、全英チャート4位に
ランクされる大ヒットを記録。幸先のいいスタートを切った。
●そして「Stop Messin' Round」収録のセカンド・アルバムが登場する。
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Mr. Wonderful
1968年9月発売。イギリス本国でのセカンド。
アメリカでは下の「英吉利の薔薇」として発売。
●全編ゴリゴリのブルースに挑戦したアルバム。
●1曲目の「Stop Messin' Round」は、ジョーがステージで好んで歌うナンバー。エアロスミスとしてのスタジオ録音はない。
●とんでもない顔(しかもオールヌード!)の左のおぢさんは、ドラムのミック・フリートウッド。
●日本盤CD、Epic SONY : ESCA-7562 |
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English Rose
1969年1月発売。アメリカでのセカンド・アルバム。
日本でのデビュー盤。邦題「英吉利の薔薇」。
●英国盤「ミスター・ワンダフル」から6曲シングル3曲、新曲3曲によるアメリカ編集盤
●「Stop Messin' Round(邦題・もたもたするな)」を1曲目に収録。サンタナが再演する「Black Magic Woman」も入って、こっちのほうがポップな選曲。
●左の女装もミック・フリートウッドおぢさん。
●日本盤CD、Epic SONY : ESCA-5421 |
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●いきなりトンデモないお顔を2発もお見せしましてすんません。文句がある方は、ミック・
フリートウッドおぢさんに言ってください。なにを考えてたんでしょ、この人。
●どちらでも「Stop Messin' Round」が聴ける。「ミスター・ワンダフル」は全編ブルース。
●アメリカ盤「英吉利の薔薇」は、LPのA面(CDでは最初の6曲)が「ミスター・ワンダフル」
からの選曲。B面に全英ナンバー1ヒットのインスト曲「アルバトロス(あほうどり)」、後年ラテン・
ロックのサンタナがリバイバルヒットさせた「ブラック・マジック・ウーマン」などのシングル曲を収録。
こちらもなかなか捨てがたい。
●「ピーター・グリーンズ・フリートウッド・マック」「ミスター・ワンダフル」と、2枚とも
全英トップ10入りというヒットアルバムを出した後、突如イミディエイト・レコードに移籍。
「マン・オブ・ザ・ワールド」というシングルを1枚を残し、今度はリプリーズに移籍する。
待遇面(ギャランティー)の問題だったと言われる。
●イギリスでは古巣のブルー・ホライゾンが、シングル発売曲を集めた編集盤「聖なる鳥」
(The Pious Bird Of The Good Omen)を1969年に出し、これが3枚目に数えられている。
で、リプリーズ移籍第1弾が、1969年9月発表の「Then Play On」。
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Then Play On
1969年9月、イギリス発売。
●ピーター・グリーン在籍時の最後のアルバム。イギリスでは14曲入り、アメリカは12曲、現行CDは13曲入りで発売。
●「パンドラの箱」収録の「Rattelesaneke Shake(がらがらへび)」と、「Rats In The Cellar」のモチーフになる「サーチン・フォー・マッジ」「ファイティング・フォー・マッジ」を収録。
●日本盤CD、ワーナー : WPCP-3401 |
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イギリス原盤LP A1. Coming Your Way
A2. Closing My Eyes
A3. Fighting For Madge
A4. When You Say
A5. Show-Biz Blues
A6. Under Way
A7. One Sunny Day
B1. Although The Sun Is Shining
B2. Rattlesnake Shake
B3. Without You
B4. Searching For Madge
B5. My Dream
B6. Like Crying
B7. Before The Begining |
現行CD
1. Coming Your Way
2. Closing My Eyes
3. Show-Biz Blues
4. My Dream
5. Under Way
6. Oh Well
7. Although The Sun Is Shining
8. Rattlesnake Shake
9. Searching For Madge
10. Fighting For Madge
11. When You Say
12. Like Crying
13. Before The Begining
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●過渡期の作品で、前作までブルース一直線の部分とポップな曲が雑然と並んでいる。
「統一感がない」という声もあるが、どうしてなかなか名曲そろいの好アルバム。
3本のギターが絡み合う1曲目の「カミング・ユア・ウェイ」なんぞ、結構背筋がゾクっくる。
●「パンドラの箱」収録の「Rattlesnake Shake」だが、ブックレットに1971年録音となって
いるが、これは誤り。同音源のブートレグLP、その名も「Rattlesaneke Shake」(AS1974)が
出ており、この中で新曲を「ニューアルバム“ナイト・イン・ザ・ラッツ”から」と紹介している。
セカンドの「飛べ!エアロスミス」の仮題が「ナイト・イン・ザ・ラッツ」だったことは、自伝の
「Walk This Way」にも記されている。ということは、仮題も決まった時期の1973年後半か
1974年の初期の演奏だったわけだ。閑話休題。
●その1974年ごろのエアロの「Rattlesanake Shake」だが、後半戦に入ってのギターバトルで
「Rats In The Cellar」の最後で使われる、♪じゃかじゃかじゃかじゃかのフレーズが出てくる。
一度使ってみたいというこのフレーズのアイデア自体はずっと前からあって、1976年「ロックス」の
中の「Rats In The Cellar」で「やっと出口が見つかった」ということなんだろう。
実はジョーも、Walk This Way:エアロスミス自伝の中で、「Rats In The cellarは、Searching
For Madgeのリフを基にしている」と証言している。
●その「♪じゃかじゃかじゃかじゃかが、アメリカ盤LPと現在のCDで「Rattlesaneke Shake」の
後ろに、メドレー風につながっている「Searching For Madge」「Fighting For Madge」という2曲。
フリートウッド・マッが、この3曲をメドレーにして演奏している。1970年のボストン・ティー・パーティー
(ボストンの有名ライブハウス)のライブやBBCライブが発売されているが、その中で聴くことができる。
スティーブンが「ボストン・ティー・パーティーで、フリートウッド・マックを見た」ことも書いているので
この時期のマックの演奏は、ジョー・ヘッズには一度聴いてもらいたい気がする。
●Rattlesnake Shakeは、Led Zeppelinの「Dazed And Cofused」なみに演奏30分という
マックのコンサートのハイライトになっていた。その中フレーズを、ジョーがーは1990年前後のツアーで
Rats In The Cellarの中で再現している。マックとピーター・グリーンへのオマージュというところか。
●このアルバム発表後、ピーター・グリーンが脱退。ソロ・アルバムを発表するが、その後は引退同然に。
「墓彫り人夫をしている」という噂もあったが、1980年代以降、ときどき公の場にも顔を出している。
またジェレミー・スペンサーもアメリカ・ツアー中にカルト教団に拉致され、そのまま脱退。
フロントマン2人を失ったフリートウッド・マックは、メンバーチェンジを繰り返しながら、生き長らえる道を
模索していく。
●以下の2枚は「エアロスミスのライバル」だった1970年代中期の作品。エアロとは直接関係はないが
マックを紹介する上で、この2枚に触れないのはアンフェアだろう。
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Fleetwood Mac
1975年発表。全米第1位。
邦題「ファンタスティック・マック」
●デュオで活躍していたバッキンガム/ニックスコンビを加えて大変身したアルバム。
●それまで唯一の女性メンバーだったクリスティーン・パーフェクト(ジョンと結婚し、クリスティーン・マクビー)とスティービー・ニックスの2枚看板となった。
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Rumours
1976年発表。全米1位31週。
邦題「噂」
●スティー・ビーニックスがジャケットに初登場。彼女「妖精」と呼ばれて、当時のロック界のセックスシンボルの1人でありました。
●ミックおぢさんもキメキメでポーズをとってますが、気になるところに2個タマがぶら下がっているのがご愛嬌。
●全編どこもシングルカットできるポップさ。「ドリームス」など全米ナンバー1ヒットを満載。
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●フリートウッド・マックのベスト盤を買うと、ほとんどが「ファンタスティック・マック」以降の曲を対象としている。
エアロヘッズとしては、面倒くさくても「英吉利の薔薇」「ゼン・プレイ・オン」を探して聴いてください。 |