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「音盤考古学」が予想以上に受けたため、あきら教授が悪のりして新講座開講。 エアロスミスが影響を受けたバンドを中心に、ロックの流れを語る暇つぶし企画。 |
●エアロスミスがカバーしたヤードバーズの曲。
ヤードバーズ(1963年5月−1968年7月) ●エアロスミスが1970年に初ライブを行った時に演奏していたのが、ヤードバーズの曲。 「Walk This Way エアロスミス自伝」の中で、スティーブンはエアロスミス結成前の記述 (第1章)で、度々ヤードバーズについて言及している。またスティーブンは1967年ごろに、 ジミー・ペイジ&ヤードバーズの前座を務めたこともあるらしい。 「とくに、ヤードバーズの動向は、ずっと注意して追っていた。ほかのだれもがやってない ハードなグルーブがあって、とにかくビートが強力だったからね」 *「Walk This Way」日本版49ページより引用 30歳以上のロック・ファンは、1970年代(輸入盤も含めて)後期ヤードバーズのレコードが 入手困難になった時代があり、「名曲『幻の10年』とはどんなものか」と必死にFMラジオ の特集など録音しまくったものである。特にジミー・ペイジ期の「Little Games」は、雑誌 でしか見たことのない高嶺の花であった(海賊盤=コピーレコードまで出回ったが)。 そんなわけで、僕もヤードバーズのレコードを探したし、ある程度思い入れを持っている。 ヤードバーズのわずか5年の歴史をここに書いておくのも、無駄ではあるまい。 (1999/08/23,10/01改訂・Akira)
●エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジという70年代3大ギタリストを 輩出したバンドとして名高いヤードバーズは、1963年5月にロンドンで結成された。 ●ヤードバーズは活動期間中、わずかなアルバムしか残していない。 イギリス盤 1965/01 = Five Live Yardbirds (Eric Clapton) 1966/08 = The Yardbirds : Roger The Engineer (Jeff Beck) アメリカ盤 1965/08 = For Your Love (Jeff Beck / Eric Clapton) 1966/01 = Having A Rave Up (Jeff Beck / Eric Clapton) 1966/08 = Over Under Sideways Down (Jeff Beck) 1967/04 = Yardbirds Greatest Hits 1967/07 = Little Games (Jimmy Page) ●イギリスにおける主なシングルは以下のとおり。 1964 (Columbia DB 7283) = I Wish You Would / A Certain Girl 1964 (Columbia DB 7391) = Good Morning Little School Girl / I Ain't Got You 1965 (Columbia DB 7499) = For Your Love / Got To Hurry 1965 (Columbia DB 7706) = Evil Hearted You / Still I'm Sad 1965 (Columbia DB 7594) = Heart Full Of Soul / Steeled Blues 1966 (Columbia DB 7848) = Shapes Of Things / You're Better Man Than I 1966 (Columbia DB 7928) = Over Under Sideways Down / Jeff's Boogie 1966/10 (Columbia DB 8024) = Happenings 10 Years Time Ago / Psycho Daisies 1967/03 (Columbia DB 8165) = Little Games / Puzzles 1968/03 (Columbia DB 8368) = Goodnight Sweet Josephine / Think About It ●以下の2枚は、アメリカでのみ発売された。 1967/07 (Epic 5-10204) = Ha Ha Said The Clown / Tinker Tailor Soldier Sailor 1967/10 (Epic 5-10248) = Ten Little Indians / Drinking Muddy Waters *青文字は、エアロスミスがカバーしたことが分かっている曲。シングル曲以外で [Train Kept A Rollin'], [I'm Not Talking]も演奏している。 ☆ヤードバーズ前、ブリティッシュR&Bブームの始まり ●1960年代初頭のイギリスでは、アレクシス・コナー、シリル・デイビス、という2人の R&Bムーブメントのリーダーがいた。1950年代後半からマディ・ウォーターズをはじめ、 アメリカを代表するのブルースマンがこぞってイギリス公演を行った。本場のブルースに触れ、 影響を受けた2人は、1960年ごろに「ブルース・インコーポレーテッド」を結成した。 ●このバンドに関わった面々には、チャーリー・ワッツ、ミック・ジャガー、ブライアン・ ジョーンズ、キース・リチャーズ(以上ローリング・ストーンズ)、エリック・バードン (アニマルズ)、ポール・ジョーンズ(マンフレッド・マン)、ジンジャー・ベイカーなど。 ●アレクシス・コナーは、数々の後進アーチストを発掘育成していた。当講座「第2時限」で 紹介するフリートウッド・マックのジョン・マクビー、そしてレッド・ツェッペリン加入前の ロバート・プラントに至るまで、とにかくコナーの人脈図はだだっぴろいのである。 ●ヤードバーズは、2つのバンドが合体して1963年に結成された。初代メンバーは
ポール・サミュエル=スミス(ベース) ジム・マッカーティ(ドラムス) クリス・ドレヤ(リズム・ギター) アンソニー・トップ・トーパム(ギター) [第2期] 1963年10月−1965年3月
●ジョルジオ・ゴメルスキーが始めたライブハウス「クロウダディ・クラブ」に、毎週日曜日 出演していたのがローリング・ストーンズ。彼らがメジャー・デビューのためクロウダディ・ クラブを離れた1964年、後任に抜擢されたのがクラプトンが加入した第2期ヤードバーズだった。 ●クラプトン時代はブルースに傾倒。イギリス公演で訪れたシカゴ・ブルースの、ソニー・ ボーイ・ウィリアムソンIIのバックなども務めている(その録音も後年発売された)。 クラプトンとキース・レルフのブルース・ハープの掛け合いがスリリングなサウンドを聴かせる。 1964年、シングル「I Wish You Would」でレコード・デビューも果たした。 ●音楽性の違うリバプール・サウンド系アーチスト(ビートルズなど)とのパッケージツアー、 シングル・ヒット強要するマネジャー、ジョルジオ・ゴメルスキーにクラプトンは猛反発。 ポップソング「For Your Love」の録音をきっかけに、1965年3月クラプトンがバンドを脱退。 クラプトンは、ジョン・メイオールとブルースブレーカーズを結成した。 ●クラプトン時代の曲でエアロがカバーしたのは、Live Bootleg収録の「I Ain't Got You」, ママキン・ミュージック・ホールこけら落とし公演でも演奏された「I'm Not Talking」。 [第3期] 1965年3月−1966年6月
●ところが「For Your Love」は全英2位、全米6位と、ヤードバーズ初の大ヒットに。 ヤードバーズは、クラプトンの後任に売れっ子スタジオ・ミュージシャンだったジミー・ ペイジに加入要請する。だがジミーは仕事が忙しいとこれを断り、代わりにジミーが 推薦したのが、ジェフ・ベックだった。 ●ヤードバーズは「For Your Love」を書いたグレアム・グールドマン(後に10CC)の 作品「Heart Full Of Soul」「Evil Hearted You」などでシングル・ヒットを連発する。 ●反面でベックは、ステージで頭の後ろでギターを弾くわ、フィードバック奏法をやるわ ギターの音色の限界に挑戦するわで、ヤードバーズはいきなりロック色を強めていく。 いい例がスティーブンやジョーをノックアウトした「Train Kept A Rollin'」だろう。 3分の短いヒット狙いのポップ・ソングの中で、ベックはファズ、フィードバックといった 奏法を、がむしゃらに試していた。 ★Train Kept A Rollin'=エアロスミスの原点 ジョー・ペリー 「この曲は多分、俺たちがエアロスミスとして最初にプレーしたかった曲の一つなんじゃないかな。 バンドを作る時って、みんなまず自分たちの知ってる曲をプレーしたくなるだろ?」 スティーブン・タイラー 「ベックときたら、ギターをなぶるわ小突き回すわで、何かもう身もだえして泣き叫ぶような音を出すんだよ」 (ロッキング・オン1994年7月号インタビューから) ●1965年春、ポップ路線を強要する初代マネージャー、ゴメルスキーとついにケンカ別れ。 サイモン・ネピア=ベルをマネージャーに迎えて、再出発する。 *サイモン・ネピア=ベル/マーク・ボランやワム!のマネージャーとしても有名。
●1966年8月、イギリスのおける2枚目「The Yardbirds (Roger The Engineer)」発表。 このアルバムでは、ユーモラスな曲調ながらもギターばりばり弾きまくりのインスト曲 「Jeff's Boogie」などが含まれている。ところがこのアルバムの録音中に、ベースの ポール・サミュエル=スミスの脱退決定。1966年夏の全米ツアーの「ベーシスト」として 参加したのが、ジミー・ペイジであった。 [第4期] 1966年6月−1966年11月 ●半年間のベック=ペイジ期が始まる。2人のヤードバーズでの録音はわずか3曲。 Happenings 10 Years Time Ago (幻の10年/ツイン・リード) Psycho Daisies (サイコ・デイジー/ペイジはベース担当) Stroll On (ストロール・オン/ツイン・リード) ●ベーシストで参加したペイジだが、8月の全米ツアー途中でベックが扁桃腺炎で倒れ リード・ギターに昇格して急場をしのいだ。ここでクリス・ドレヤがベースにスイッチし、 ベック復帰後は、ペイジとのツイン・リード体制となった。 ●ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望」に出演して「Stroll On」を演奏。 この映画は当初ザ・フーに出演交渉をしたが都合が着かず、代役としてヤードバーズが 出演。1966年10月14日にロンドンのマーキーで撮影が行われた。ここではベックが“ピート・ タウンゼントばり”のギター破壊を披露している。この映画「欲望」は当時のモッズ風俗が 残されており、今も人気は高い(物語は抽象的でよくわからんが)。 ●この撮影直後、11月にベックも脱退。自分のグループを結成する。 (* Jeff Beckのソロ・シングルB面曲「Beck's Bolero」でも、ペイジが助演している)。 ●偶然だがリブ・タイラーの育ての父、トッド・ラングレンは「Faithful(誓いの明日)」と いう1960年代トリビュート・アルバムを作っている。このアルバムはA面がビートルズの 「ストロベリーフィールズ・フォーエバー」、ビーチ・ボーイズの「グッド・バイブレーション」 といったロック・クラシックを“よくぞ、ここまで似せた!”という録音で聴かせる、凝りに 凝ったカバー集。B面が1960年代ロックそのままの新曲という見事なものだった。 このアルバムのA面1曲目に、サイケデリック・ムーブメントに影響を受けたヤードバーズの 「Happenings 10 Years Time Ago(幻の10年)」が選ばれていた。 (エアロスミスは、デビュー・ステージで「Happenings 10 Years Time Ago」を演奏していた)。 [第5期] 1966年11月−1968年7月
●元ロカビリー・シンガーのミッキー・モストが、ヤードバーズのプロデューサーとなる (後にRAKレコード設立し、1970年代にスージー・クアトロなどを売り出した人)。 ここで迷作アルバム「Little Games(リトル・ゲームス)」を録音。ペイジに言わせると 「ろくにプレイバックも聴いてない」不完全なアルバム。もっともここでLed Zeppelinで 有名になるジミーのボウイング(バイオリンの弓弾き)や、Zepのステージでも演奏された 「White Summer」などの曲が収録されている。 ●このアルバムはイギリス本国では発売されず、モストの助言で録音したシングルも不発。 ヤードバーズ最後のシングルとなったのが「Goodnight Sweet Josephine」。この曲のB面で、 エアロスミスが「Night In The Ruts」でカバーした「Think About It」が発表されている。 ●1968年3月の全米ツアー中にライブも録音。これはLed Zeppelinが有名になった1971年に 発売され、回収・発売禁止処分となる「Live Yardbirds featuring Jimmy Page」であった。 ●ヤードバーズに見切りをつけたキース・レルフとジム・マッカーティが1968年7月に脱退。 トラッド・フォークを基調にジャズなどの要素も取り入れたしたニュー・グループ、 ルネッサンスを結成する。 ●秋のスカンジナビア・ツアーの契約を結んでいたヤードバーズは、ペイジが新たにメンバー 探しを開始。ボーカリストは個性的シャウトで人気上昇中のテリー・リードに白羽の矢を 立てるが、既にミッキー・モストと契約していたリードはこれを断らざるを得なかった。 そして彼が推薦したのが、バーミンガムでくすぶっていたロバート・プラント。プラントの友人、 ジョン・ボーナムがドラムに就任。ベーシストには、ペイジのセッションマン時代からの知人、 ジョン・ポール・ジョーンズに決定した。この「ニュー・ヤードバーズ」はスカンジナビア・ ツアー後、レッド・ツェッペリンと改名。ヤードバーズの歴史はここに終止符を打った。 ●残念ながら、ヤードバーズの歴史を1枚で聴けるベスト・アルバムは、現在はない。 版権を所有するマネージャーが3人いるため、初期音源、ロジャー・ジ・エンジニア、 リトル・ゲームスの音源を、1枚にまとめるのが現在では困難なのだ。 ●全然ないかというと、1990年にオーストラリアのRAVENが出した編集盤 「Over Under Sideways Down (A Comrehensive Collection 1963-1968) 28 tracks featuring ERIC CLAPTIN, JEFF BECK, JIMMY PAGE」がある。 どういう理由で許可されたのか不明だが、エアロがカバーした5曲が全部一気に聴けるのは この1枚だけ。もしも中古屋で安くみつけたら、ぜひとも買ってみよう。 ●ベスト盤でない、Over Under Sidewaus Down=独レパートワー盤もあるので注意。 そちらは、イギリス盤「ロジャー・ジ・エンジニア」のアメリカ再編集LPの再発である。
そのうち、Live Yardbirdsの画像も追加する予定。 |