あきら教授のエアロ夏期講座
COVERS : Roots of AEROSMITH ver.2001
〜15万+1万(計16万)ヒット御礼/AERODYNAMICS開設2年企画〜
やっぱり今年も出ました! エアロ夏季講座
(知らない人は昨年度版を見てね)
2年目のネタは、あの「COVERS」の改訂強化版。エアロスミスに影響を与えたバンドの紹介です。



Summer of 1969,

StevenとJoeの出会い、そしてピーター・グリーン
1969年の夏、スティーブン・タラリッコはニューハンプシャー州サナピーにあるクラブ、ザ・バーンに流れ着いていた。2枚のシングルを出したChain Reaction、続くThe Chainが不発に終わったスティーブンは、ザ・バーンのステージに立ったギタリストと運命的な出会いを果たす。彼の名はThe Jam Bandのジョー・ペリー。トム・ハミルトンもThe Jam Bandのメンバーだった。


はじまって2分もすると、連中(The Jam Band)は完全にノリノリだった。Red House、ジェフ・ベック、MC5のRamblin' House。ジョー・ペリーは髪の毛を目まで垂らし、黒い角縁の分厚いメガネをかけている―――すごく不格好なんだけど、うたいだすと信じられないくらいカリスマ性格があった。そこでバンドは、Rattlesnake Shakeに入り、小屋がまるごとロックしはじめた。はっきりいって、当時のジョーはチューニングのまともにできなかったけど、バンドははいずりまわるようなフリートウッド・マックのリフを見事にキメて、見るとスティーヴンは、口をぽかんと開けていた。すっかり青ざめて、ジョーから目が離せなくなっていた。
★ザンク・パッカーの証言(エアロスミス自伝−Walk This Way日本版P.70-71)

あいつらには、おれがそれまでにやったどんなセックスよりもいいグルーブがあった(中略)。Rattlesnake Shakeって曲の途中で、おれは実際に天啓としか言いようのないものを経験した。ジョーの弾き方、あの機関車みたいなフィーリングに、 すごく感じるものがあったんだ。
★スティーヴン・タイラーの証言(Walk This Way日本版P.98)


このRattkesaneke Shakeは、Peter Green's Fleetwood Macのナンバーである。
次は、ジョーがボストン・ティー・パーティーについて語った場面。

ビッグなバンドは、みんなあそこでやった。―――ジェフ・ベック、ドアーズ、ビッグ・ブラザー(&ホールディング・カンパニー=ジャニス・ジョプリンが在籍)、スピリット、レッド・ツェッペリン、MC5、ザ・フー。
そして、なんといってもフリートウッド・マック。イギリスのブルース・バンドで、1968年から1969年にかけては、ほとんどボストン・ティー・パーティーのハウスバンドだった。グループの創立者でギタリストのピーター・グリーンは驚異的なプレーヤーで、エリック・クラプトンやジミー・ペイジにもぜんぜんひけを取らなかった。いつもティー・パーティーのステージにのはじに立って、ピーター・グリーンがStop Messin' Round、Another Woman、Oh Well、Searchin' Fror Madge、Rattlesnake Shakeなんて曲をやるところを、じっと見てたもんだ。
★ジョー・ペリーの証言(Walk This Way日本版P.96-97)

続いては、ROCKS製作時の裏話。
(Peter Green's Fleetwood Macの)Searchin' For MadgeをもとにしたTit For Tatというのもあって、これが〈地下室のドブねずみ〉Rats In The Cellarになった。
★ブラッド・ウィットフォードの証言(Walk This Way日本版P.297)



Rattlesnake Shake / Peter Green's Fleetwood Mac
スティーブンとジョーを結びつけた1曲。
それは、アマチュアバンドのThe Jam Bandでジョーが弾いていたRattlesnake Shake(がらがら蛇)だったという。

この曲は、エアロスミス最初のライブでも演奏された(Walk This Way日本盤 P.132参照)。スタジオ録音はないが、Pandora's Box(Disc1- track13)に1973年秋ごろのライブが10分28秒にわたり収録されている。JUST PUSH PLAY tourでも、ニューヨーク(Jones Beach)公演で再演されるなど、今も時々演奏されている。Train Kept A Rollin'に比べると登場回数が少ないが、エアロスミス結成秘話を「想像する」ときには欠かせない曲だ。

そう書くと、聴いてみたくるでしょ?

でも、ここで終わっては夏期講座じゃないよな(笑)。
もう一歩踏み込まないと。

前回のCovers岩石音楽講座Fleetwood Mac編では、スタジオアルバムを紹介しただけで終わってしまったが、調べてみると当時のライブ録音がいくつか発売されている。その中でも重要なものが2つ。

1つは1968-1970年にイギリスBBCラジオに出演したときの録音集、もう1つはLive At Boston Tea Party(ジョーの証言にも出てくるボストンのライブハウス)で、1970年2月に録音されたもの。ちょうどこの日のライブを、スティーブンやジョーが見ていたかどうかはわからないけど、近い時期であることは間違いない。

Live At The Boston Tea Party

1970年2月に、3日連続で行ったBoston Tea Party公演のライブ。最初1985年に青いカバーの2枚組LPで発売されたが、現在は完全版として3回分のライブがCD3枚で発売されている。Vol.1では、24分38秒にわたるrattlesnake Shakeが収められている。しかも24分もやってまだ終わらず、途中で終わるというとんでもない曲だ(Vol.3にも別バージョンを収録)。Vol.1-3の中でも、曲目的にはVol.1がオススメ。日本盤も日本クラウンから発売。

Boston Blues

上のCD3枚を、2枚組に再編集したヨーロッパ編集のお徳用盤。タワーレコード渋谷などでは、2枚組なのに2000円前後で売っている。サンタナが再演したBlack Magic Woman、ブラック・クロウズでもおなじみOh Well、問題のRattlesanek Shakeと代表曲は網羅。もし貴方がギターキッズのジョー・ファンで、運良くこれを見つけたらぜひ聴いて欲しい1枚。


このRattlesnake Shakeという曲は、Fleetwood Macの1969年9月発売のアルバム「The Play On」に収録されている。Pandora's Box収録のエアロスミスの演奏は、Rattlesnake ShakeとSearchin' For Madgeという曲をメドレーにして演奏しているのだが…。Boston Tea Partyのライブを聴いたら、本家Mac自身がくっつけてメドレーで演奏してました!(アルバムThen Play Onでは、独立した曲の扱い。)。
1970年ごろはMacのライブ・バージョンはまだ発売されていなかったわけだが(1985年に発売)、スティーブンやジョーは見てきたライブをそのまんまコピーしていたわけだ。この「好きなバンドはコピーしまくる!」という、エアロスミスの原点が垣間見られるようでオモシロイ。

補足1)
ジョーもスティーブンも、Shake-Madgeのメドレーの形で、「Rattlesnake Shake」と言っているようだ。細かく言うと、Pandora's Box収録では、4分30-40秒のところで、Rattlesnake ShakeからSearchin' For Madgeに突入する。このフレーズは約3年後、Rocks録音時にRates In The Cellarの中で復活、曲の終わり方もそのまんまRatsのフィナーレとなっている。

補足2)
Rats In The Cellarを演奏する時、よくスティーブンが「エアロスミスのフレッシュ・ブルース」と紹介していた。ハードロックの代表格のRatsがなぜブルースと言われるのか…は、この経緯を知ってると納得できる。Permanent Vacation tour(1987-1989年ごろ)のライブでは、Ratsが8分程度の長めバージョンで演奏されていたが、Peter GreenとJeremy Spencerのギターバトルを再現するかのように、ジョーとブラッドがMadgeのフレーズをてんこ盛りで弾きまくっていた(1968-1970年のMacは、Peter、Jeremy、Danny Kirwanのギタリスト3人+ドラムMic Fleetwood、ベースJohn McVieの5人組)。

補足3)
Fleetwood Macは、1960年代後半のイギリス3大ブルース・バンドと言われる。が、ライブでは1950年代のロックン・ロール、ロカビリーを能天気に歌う一面もあった。その持ち唄の1つが、Great Balls of Fire(火の玉ロック/原曲ジェリー・リー・ルイス)。

エアロスミス初ステージの演奏曲目の中に、Great Balls of Fireがあるが、これはFleetwood Macのバージョンをカバーしたものだろう。「好きだったバンドがカッコよくカバーしてたから、俺たちもやってみました」と推測されるものは他にもある。Live Bootleg!のTrain Kept A Rollin'のギターソロ(夜のストレンジャー/Stranger In The Night)はジミ・ヘンドリックス、同じく70年代にTrainのメドレーで使ったBat Manはキンクスがライブで演奏している。こういう「小技」までまねきってしまうロック小僧精神が、エアロスミスの原点なのかもしれない。

参考) Live At The BBC

Peter Green's Fleetwood Macが1967-1970年にBBCラジオで演奏した曲を36曲収録した発掘音源。Rattlesnake Shake (incl. Searchi' For Madge), Oh Well, Stop Messin' Roundなど代表曲を網羅…しているが、前述の能天気R&Rカバーもかなり入っており曲調の変化が激しい。
入門編にこれを聴くと、バンドの全体像が見えなくなるので、最初はBoston Bluesをオススメ。

エアロスミスがカバーした曲
Rattlesnake Shake
Serchin' for Madge / Fight For Madge (Rats In The Cellarの元ネタ)
Oh Well
Stop Messin' Round (ジョーがステージで歌う持ち唄)
Great Balls of Fire